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2023/08/22/

タイムレコーダーの歴史 ー誕生からiPadアプリまで、変遷と進化の過程ー

現在ではすっかりおなじみのタイムレコーダー。タイムレコーダーは、19世紀後半に誕生し、現在に至るまで様々な種類のものが登場してきました。今では、時刻を記録するだけのものから、PCと連携する高機能なもの、iPadをタイムレコーダーにするアプリなど様々なものがあり、日々の業務効率化に役立っています。 ここでは、タイムレコーダーが誕生してから、現在に至るまでの歴史を解説します。

1888-1945 タイムレコーダーの誕生

タイムレコーダーの誕生は、19世紀後半までさかのぼります。 この時代、世界各国で産業の近代化が進みました。アメリカでは、1860年代から展開された産業革命が本格化し、鉄道建設や重工業が進行した時期です。近代化の影響によって、労働者数の増加と雇用形態の多様化が生じ、効率的な勤怠管理ツールの需要が高まりました。

最初期の機械式タイムレコーダーとして代表的なものは、1888年にアメリカのウィラード・L・バンディ(Willard L Bundy)によって開発されました。このタイムレコーダーが、当時の勤怠管理に与えた影響は大きく、 オーストラリア英語ではタイムレコーダーのことを「bundy」と呼ぶほどです。後に彼は、兄弟のハーロー・E・バンディ(Harlow E Bundy)とともに、Bundy Manufacturing Companyを設立。この会社は、IBMの前身企業の一つとなっています

日本では1931年、天野修一により電気式のタイムレコーダーが開発されました。彼は現在のアマノ株式会社の創業者です。 このタイムレコーダーは、機械による字送りや電気による時刻印字を行える画期的なものでした。当時の政府の方針により、国産タイムレコーダーの開発・実用化は積極的に行われました。 しかし、第二次世界大戦により、日本のタイムレコーダー開発は停滞することになります。

1945-2001 タイムレコーダーの普及

再び、日本でタイムレコーダーの開発が行われるようになったのは、終戦年の1945年です。同年11月、上述の天野修一により横浜機器株式会社が設立され、タイムレコーダーの製造が再開されました。この会社が現在のアマノです。

その後普及が進み、1962年には流行歌ドント節」の歌詞に登場しました

二日酔いでも 寝ぼけていても
タイムレコーダー ガチャンと押せば
どうにか格好が つくものさ

すっかり世の中に定着していることがわかります。

1966年には、株式会社テクノ・セブンのタイムレコーダー「NTR-1」がグッドデザイン賞を受賞。タイムレコーダー初のグッドデザイン賞受賞になりました。

1978年には、テクノ・セブンから集計機能付きタイムレコーダー「ジョブコール」が発表されています。集計機能付きタイムレコーダーとは、出退勤の記録だけではなく、勤務時間等の自動集計もできるものです。この製品が、確認できる中で最初の集計機能付きタイムレコーダーです。

1993年には、セイコーの「QR-100」, 「QR-120」がグッドデザイン賞を受賞しました。この製品の受賞後、後述する「タブレット タイムレコーダー」の登場まで、タイムレコーダーのグッドデザイン賞受賞製品は現れていません。

2001年には、アマノから「Time P@CK」が発売されました。PCに接続できるタイムレコーダーとして、現在でもメジャーなシリーズです。 同時期に、その他の中規模・大規模企業向けのシステムも登場し、中規模以上の企業で勤怠管理のシステム化が進みました。しかし、中小企業や工場・店舗においては、依然、単機能型タイムレコーダーが根強く利用されていたようです。

2001-2010 クラウド勤怠管理サービスの登場

2000年代に入ると、インターネットの普及が急速に進みました。総務省の調査によると、1996年にはインターネットを利用していると答えた企業は50.4%でしたが、2002年には96.1%と言われており、この時点でほとんどの企業にインターネットが普及していたことがわかります。

インターネットの普及に伴い、インターネットを利用した勤怠管理システムが登場しました。いわゆるクラウド勤怠管理サービスです。当時はクラウドという名称ではなく、ASP(Application Service Provider)と呼ばれ、その後SaaS(Software as a Service)という呼称となりました。システムの構成やコンセプトは ASP、SaaS、クラウドのどれも同じです。

2000年台前半に登場したもので代表的なクラウド勤怠管理システムとしては、2001年公開のアマノの「CYBER XEED就業」、2003年公開のネオレックスの「バイバイ タイムカード(現キンタイミライ)」、2004年公開のソニーネットワークコミュニケーションズの「インターネットタイムレコーダー」などが挙げられます。その後、2010年にヒューマンテクノロジーズの「キングオブタイム」、同年にDonutsの「ジョブカン」、2016年にネオキャリアの「Jinjer」などが登場します。

2010-現在 タブレットアプリ タイムレコーダーが登場

2010年から、iOSやAndroidのタブレット端末が普及し始めました。それに伴い、タブレット端末にタイムレコーダーの機能を持たせる、アプリ型のタイムレコーダーが徐々に登場し始めました。

2015年に登場したネオレックスのタブレット タイムレコーダー」は、iPadをタイムレコーダーにするアプリです。ビデオメッセージなど、従来のタイムレコーダーにはなかった機能が加えられており、「タイムレコーダーを再発明する」というコンセプトが評価され、グッドデザイン賞を受賞しました。タイムレコーダーがグッドデザイン賞を受賞するのは22年ぶりであり、久しぶりのタイムレコーダーの進化となりました。また、ソフトウェアとしてのタイムレコーダーがグッドデザイン賞を受賞することは初めてで、タイムレコーダーの歴史上の大きな転換点になるかもしれません。

年表

現在までのタイムレコーダーの歴史を年表形式にまとめました。

西暦 出来事
1888 ウィラード・L・バンディが機械式のタイムレコーダーを開発。
1931 天野修一が日本初のタイムレコーダーを開発。
1945 横浜機器株式会社(現在のアマノ株式会社)設立。
1962 植木等「ドント節」リリース。歌詞にタイムレコーダーが出てくる。
1966 テクノ・セブンのタイムレコーダー「NTR-1」がグッドデザイン賞を受賞。タイムレコーダーとしては初の受賞となる。
1978 テクノ・セブンが集計機能付きタイムレコーダー「ジョブコール」を発売。
1993 セイコーのタイムレコーダー「QR-100」「QR-120」がグッドデザイン賞を受賞。
2001 アマノがPC接続型タイムレコーダー「Time P@CK」を発売。
2001 アマノがASP型の勤怠管理システム「CYBER XEED就業」を提供開始。
2003 ネオレックスが「バイバイ タイムカード(現キンタイミライ)」を提供開始。
2004 ソニーネットワークコミュニケーションズが「インターネットタイムレコーダー」を提供開始。
2010 ヒューマンテクノロジーズが「キングオブタイム」を提供開始。
2010 Donutsが「ジョブカン」を提供開始。
2015 ネオレックスのiPadアプリ「タブレット タイムレコーダー」がグッドデザイン賞を受賞。タイムレコーダーとしては22年ぶり。
2016 ネオキャリアが「jinjer」を提供開始。
2017 中央教育審議会により、学校でのタイムレコーダー利用が提言される

タイムレコーダーの現在

戦前に登場し、高度成長期にすっかり日本中で定着したタイムレコーダーは、コンピューターによるシステム化に少しずつ移行してきています。しかし現時点でも年間10万台近いタイムレコーダーが販売されています。その販売数は底固く安定しており、耐用年数5~10年として計算すると、未だ50~100万台以上のタイムレコーダーが日本中で活躍していると推測されます。

昨今では、「働き方改革」が社会の大きな関心事となっており、過重労働の防止や、コンプライアンス強化の観点からも、勤怠管理の重要性が高まってきています。「学校にもタイムレコーダーの導入を」といった提言が出されるなど、タイムレコーダーや勤怠管理がこれまで以上に注目されています。

今後、iPadアプリなどの新しいタイムレコーダーや、クラウドサービス、社会の変化などにより、タイムレコーダーの歴史とタイムレコーダーの市場がどのように変化していくのか、とても楽しみです。

引用元

  1. US393205A – bundy – Google Patents
  2. Bundy | Define Bundy at Dictionary.com
  3. The International Time Recording Company
  4. アマノ物語 | 企業情報 | アマノ株式会社
  5. アマノのあゆみ | 企業情報 | アマノ株式会社
  6. ハナ肇とクレイジーキャッツ ドント節 歌詞 – 歌ネット
  7. タイムレコーダー [NTR-1] | 受賞対象一覧 | Good Design Award
  8. 沿革|ニッポー株式会社
  9. タイムレコーダー [SEIKO QR-100, 120] | 受賞対象一覧 | Good Design Award
  10. アマノ製品の変遷 | 企業情報 | アマノ株式会社
  11. 統計調査データ:通信利用動向調査:報告書及び統計表一覧(企業編)
  12. 総務省|平成29年版 情報通信白書|数字で見たスマホの爆発的普及(5年間の量的拡大)
  13. タイムレコーダー [タブレット タイムレコーダー] | 受賞対象一覧 | Good Design Award
  14. 統計データ/JBMIA(一般社団法人 ビジネス機械・情報システム産業協会)
  15. 学校にタイムカード導入を 教員働き方改革で中教審提言:日本経済新聞

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(最終更新:2024/01/25(リンク更新))

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