【ITmedia】で、どうやって儲けるの?
2015.11.27
ITmediaさんの新連載「で、どうやって儲けるの?」にて:100年以上変わらなかった「タイムレコーダー」が、新しいビジネスを生む日、としてタブレット タイムレコーダーをとりあげていただきました。
一時的とはいえトップページにも写真が載りました。
私たちの考えや思いをしっかりと受け止めた上で、記者の方の独自の視点から「タブレット タイムレコーダー」を説明していただきました。
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1511/27/news022.html
(記事全文)
タイムレコーダーは100年以上前に開発されたのに、基本的な機能は同じ。出退勤の時間を記録するだけ。長く変わらなかった市場に、新しいビジネスが生まれようとしている。それは……。
[土肥義則,ITmedia]
あなたは「タイムレコーダー」について、どのように感じていますか? このように聞かれて返答に困る人も多いのでは。「会社に着いたときに時間を記録して、家に帰るときにまた時間を記録して。それ以上でもそれ以下でもない」「そもそも考えたことがないので、よく分からない」といった声が聞こえてきそうだ。
タイムレコーダーは会社で最も人の出入りが激しいところ……いわば“一丁目一番地”に設置されているのに、ほとんどの人が気にとめない。そんな存在感の薄い商品に、ちょっとユニークなモノが登場した。その名は「タブレット タイムレコーダー」。名古屋に拠点を置くネオレックスという会社が、この7月にリリースしたのだ。
タブレット タイムレコーダーは、iPadをタイムレコーダーにするアプリ。画面上で勤怠管理ができることのほかに、(1)出退勤時、自動的に顔写真が記録される(2)相手を選んでビデオメッセージを送りあうことができる(3)天気予報を見ることができる――。「えー、自分の顔写真が撮られるなんて嫌だよ」「目を閉じた写真が保存されるのは勘弁してほしい」と思われたかもしれないが、心配ご無用。写真は何度も撮影することができるので、“最高の一枚”を手にすることができるかもしれない。また、心遣いとして画像補正をかけているので、実物よりもちょっぴりキレイに撮れるとか。
「ビデオメッセージなんているの? メールで十分でしょ」と感じられたかもしれないが、職場によってはPCを頻繁に使えないところがある。例えば、ホテルや病院など。二交代・三交代制の職場では、その日の仕事を次の人に引き継ぐことも重要な仕事になる。そうした業務もビデオメッセージを使えば、身ぶり手ぶりで伝えることができるのだ。
“再発明”の可能性
タイムレコーダーの歴史を調べてみると、19世紀に米国で発明されたそうだ。かれこれ100年以上も使われているが、基本的な仕組みは同じ。出勤するときの時間、退勤するときの時間、それぞれを記録するだけ。10年ほど前からクラウド上で管理するモノも登場しているが、基本的な機能は同じ。変わらない歴史を刻んできた商品なのに、なぜネオレックスはこの市場に“新しい時”を刻もうとしたのか。
「あまり知られていないと思うのですが、タイムレコーダー市場って大きいんですよ。カードを入れて時間を記録するタイプのモノでも、年間10万台も売れています。そんなに売れているのに、100年以上もイノベーションが起きていない。そこにビジネスチャンスがあると思ったんですよ」と語るのは、ネオレックスの駒井研司CEO。
出勤状況をクラウド上で管理している会社も多く、同社もそうしたサービスを提供している。日頃からタイムレコーダーのあり方を考えていた駒井CEOは「全国に何カ所も拠点を置いている会社であれば、クラウド上で管理するのは便利。でも、従業員が1カ所に集まっている職場ではアプリで十分」と思った。クラウド上で管理すると、料金は1人当たり月間数百円ほど。年間で計算すると、かなりのコスト負担になるが、アプリだと初期費用のみで提供できるはず。そんなことを考えながら、開発がスタートしたという。
タイムレコーダーが開発されてから100年以上が経っているのに、なぜタブレット タイムレコーダーのように、他社は新しい機能を追加しようと思わなかったのだろうか。
そんな質問を投げかけてみると、駒井CEOは「必要がなかったからでしょ」とサラリ。じゃあ、自分の写真を撮影する機能も、ビデオメッセージ機能もいらないのでは。自己否定するかような発言の真意を聞いてみると、「『必要は発明の母』という言葉がありますよね。これは必要だなあと思って、開発が生まれてくると思うんですよ。もし、当社がやってきたことが必要だったとしたら、もっと前に他社がやっていたと思うんですよね。でも、やっていない。ということは、新しい機能を搭載したことで、それが受け入れられたら“再発明”になるのではないでしょうか。100年以上変わらなかったタイムレコーダーに新しい機能を搭載したことで、これまでとは違った別のモノに生まれる可能性があると思っています」
タイムレコーダーの役割
さて、気になる価格は従業員10人当たり1万800円(税込、iPad1台で利用できるのは300人まで)。人数が増えれば料金は上昇するわけだが、なんせ“ぽっきり価格”である。導入後のメンテナンス代などは発生しないのに、このタイムレコーダービジネスを軌道に乗せることができるのだろうか。
「先ほども申し上げましたが、カードを入れて時間を記録するタイプのモノでも、年間10万台も売れているんですよ。その市場の10%でも取れることができれば、従業員30人ほどの当社でも十分にやっていけます」とのこと。
記者がこのタブレット タイムレコーダーに注目しているのは、今後のことである。会社の人間が最も通る場所に置いているので、アイデア次第で新ビジネスが生まれそうな予感がプンプン漂うのだ。例えば、カメラを搭載しているので警備会社とタッグを組めば防犯機能の役割を果たすことができる。自動販売機の中に設置すれば、出勤時に“ついで買い”の需要が生まれるかもしれない。とまあこんな感じで、これまでタイムレコーダーは空気のような存在だったかもしれないが、これからはなくてはならない存在になるかもしれないのだ。
取材の最後に、駒井CEOはタイムレコーダーと働き方の関係に触れた。「その昔、日本の企業は従業員に『長く働け、長く働け』と言っていたのに、今は『早く帰れ、早く帰れ』と言っていますよね。でも、言うほうも言われるほうも、あまり気持ちのいいものではないですよね。自分のことは自分で管理する――そうした環境になれば、みんなが気持ちよく働くことができるようになるのではないでしょうか。自己管理が求められる時代になれば、タイムレコーダーの役割は今とはかなり違っているでしょうね」