2023/12/06/06. 勤怠管理の運用
不正打刻・タイムカードの改ざんとは?問題点と防止策を分かりやすく解説
はじめに
日々の出勤・退勤時、タイムカードを押したり、ICカードをタッチすることで、打刻を行っていると思います。打刻から計算した勤務時間が給与支払いの基準となるため、打刻は正確に行われなければなりません。
しかし、不正打刻やタイムカード等に打刻した記録の改ざんが行われてしまうことがあります。例えば、勤務者がタイムカードを実態より勤務時間が長くなるよう書き換えて残業代を過剰に受け取ったり、管理者が勤務時間を実態より短くなるように書き換えて残業代を支払わない場合などがあります。こうした不正打刻や改ざんが生じると、給与が適切に支払われず、勤務者間に不公平が生じてしまうため、不正打刻や改ざんの防止策は勤怠管理上の重要な課題です。
この記事では、不正打刻・改ざんの種類、違法性、その防止策について解説します。
不正打刻・タイムカードの改ざんの対策はなぜ重要?
そもそも打刻とは
まず最初に、「打刻」とは何か説明します。打刻とは主に、出退勤をした時刻を記録することです。現在では、打刻を行うツールとして、タイムカード、PC、タブレット、スマートフォン、ICカードなど様々なものが使用されています。正確な勤務時間を把握するため、打刻によって客観的な記録を残すことが求められています。また打刻ではありませんが、紙の出勤簿に出退勤の時刻を記録する方法もあります。算出した勤務時間に基づいて、給与計算や残業時間の管理がされます。
不正打刻・改ざんとは
不正打刻とは、意図して事実と異なる打刻の記録を付けることです。また、打刻した記録の改ざんとは、打刻された記録を事実とは異なるものへと書き換えることです。
不正打刻・改ざんの対策はなぜ重要?
冒頭で触れたように、不正打刻・改ざんが行われた場合、給与計算や労働時間の把握が正確に行われなくなるため、問題となります。不正を行った勤務者に対し、実態より多くの給与が支払われてしまうと、公平さが損なわれてしまいます。また、管理者は勤務者の労働時間を管理する責任がありますが、それが適切に果たされなくなってしまいます。
打刻や勤怠管理の重要性については、記事「勤怠管理とは?目的・流れ・方法まで勤怠管理がわかる!」でさらに詳しく取り上げています。
不正打刻・改ざんの実例・種類
不正打刻・改ざんの例にはどのようなものがあるでしょうか? いくつかのパターンに分類し、具体例と合わせて紹介します。
a 打刻漏れ偽装
ここでは「本来打刻すべきタイミングで打刻を行わず、後から実態と異なる時刻を申請すること」をそう呼んでいます。
例)
- 遅刻をした場合に意図的に打刻を行わず、
後から始業時刻に間に合っている時刻を申請することで、
遅刻を無かったことにする。 - 残業終了時にわざと打刻を行わず、
後から実態よりも遅い退勤時間を申請して、
残業代を不当に受け取る(カラ残業)。
b 打刻機の時刻操作
ここでは「実態と異なる時刻が記録されるように機械を操作して打刻を行う」ことをそう呼んでいます。
例) 遅刻をした場合などに、タイムレコーダーの時刻を変更して打刻を行い、遅刻を無かったことにする。
c なりすまし、代理打刻
本人以外が打刻することです。特にタイムカードは、一つのラックに複数人分をまとめて保管している場合が多く、なりすましが起こりやすいです。
例)
- 他の勤務者が代理で打刻を行うことで、遅刻を無かったことにしたり、長く残業していたように見せかける。
- 店長が勝手に勤務者のタイムカードで打刻をして勤務時間を実態より短く記録する。
d 改ざん
打刻した後に実態と異なる時刻で打刻の記録を上書きすることです。
例)
- 勤務者や管理者が、タイムカードに打刻された時刻を手書きで書き換える。
- 勤務者が、勤怠管理システム上で訂正の機能を使って、実態と異なる時刻に書き換えたり、管理者アカウントで不正にログインをして打刻を書き換える。
不正打刻・改ざんは違法?
次に、不正打刻・改ざんがどのような法律に違反しうるかを解説します。
勤務者側の不正の場合
不正打刻を行い、給与を本来よりも多く会社に支払わせた場合、刑法第246条の詐欺罪に該当する可能性があります。詐欺罪は「人を欺いて財物を交付させる」場合に成立します。その会社に過剰に給与を支払わせ、損害を与えたと判断された場合、民法704条「悪意の受益者の返還義務等」に該当する可能性もあります。この場合には勤務者は賠償の責任があります。
管理者側の不正の場合
不正打刻や改ざんなどで、勤務を行った分の賃金を支払わない場合(未払い)、労働基準法違反になります。特に、残業代については割増賃金の支払い義務があります。
労働基準法については、記事「労働基準法が5分でわかる!かんたん解説記事」で詳しく説明されています。
勤務者側・管理者側共通
システムにデータ保存されている記録を改ざんした場合、電磁的記録不正作出罪に当たる可能性があります。電磁的記録不正作出罪は「人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者」が対象であるため、勤務者・管理者のどちらであっても該当する可能性があります。
不正打刻・改ざんが発生した場合の対処方法
次に、不正打刻・改ざんが発生した場合に、どのような対処がされるかを解説します。
返金・返還手続き
支払われた給与について、本来あるべきだった状態に戻す手続きがとられます。勤務者側の不正の場合、会社側が賃金の過払い分について返還請求をすることになります。管理者側の不正の場合、賃金の未払い分を会社が支払うことになります。
不正の関与者への処分
就業規則に罰則が定められている場合は、それに沿って、減給や解雇といった罰則が適用されます。就業規則に定められている場合、懲戒解雇が妥当という判例もあります。一方で、会社の労務管理に問題がある場合は、不正打刻を理由とした解雇が不当とされた裁判例もあります。
再発防止策を取る
不正が再発しないように、次で紹介するような再発防止策を取り入れることも大切です。
不正打刻・改ざんを防ぐには
ここでは、不正打刻・改ざんを予防する方法を紹介します。まずはタイムレコーダーやパソコンを用いた客観的な記録方法の導入や、打刻のルールの周知を行うことが大切です。それに加えた防止策として「不正打刻・改ざんの実例・種類」で挙げた各パターンに対する防止策を紹介します。
a 打刻漏れ偽装への対策
●技術的対策
技術的な対策は、打刻漏れが起こらないように、打刻しないと勤務できないような機械による仕組みを導入するというものになります。そもそも打刻漏れが起こりえなければ、それを装うことも出来ません。
例)
- 入館証をかざした記録がそのまま打刻として記録されるシステムを導入する。
- パソコンのログイン・ログアウトの記録を打刻とする。
●人的対策
人的な対策の1つ目として、打刻漏れに対してペナルティを設けて、打刻漏れ偽装を抑止する方法があります。
例) 就業規則に規定して、打刻漏れが多い場合に始末書を提出してもらう、減給する。
人的な対策の2つ目として、打刻漏れ時の訂正が適切であるかを1つ1つ確認する方法があります。
例) 疑わしい記録があった場合、勤務者に事実関係を確認する。
なお、打刻漏れ自体についての対策は、ブログ記事「タイムカード押し忘れ・打刻忘れゼロへ!実用・前向きアイデア集」をご参照ください。
b 打刻機の時刻操作への対策
●技術的対策
技術的な対策には、打刻機の時刻を勝手に変えることができないようにする方法があります。
例)
- 鍵付きで時計を勝手に操作できないタイムレコーダーを導入する。
- 勤怠管理アプリ・システムの場合、権限設定を行い、管理者以外は時刻を変更できないようにする。
c なりすまし、代理打刻への対策
●技術的対策
技術的な対策としては、本人以外打刻できないか、本人が打刻したかを後から確認できるような打刻方法の導入があります。
例)
- 指紋、顔などの生体認証を導入し、本人以外打刻できないようにする。
- 打刻時に顔写真撮影を行い、後から打刻者を確認できるようにする。
●人的対策
人的な対策としては、他の人の打刻がしにくい状態を作る方法があります。全員分のタイムカードが一つのラックに並んでいる状態だと代理打刻がしやすくなってしまうため、不正打刻の面からは望ましくないです。
例) 打刻で使用するICカードやQRカードを個人で携帯する。
d 改ざんへの対策
●技術的対策
技術的な対策の1つ目として、勤務者が打刻を編集できなくする方法があります。
例) 勤怠管理アプリ・システムで、管理者以外が打刻を編集できない設定を行う。
技術的な対策の2つ目として、打刻を訂正したことが分かるようなツールを使う方法があります。
例)
- タイムカードを用いている場合、手書きで訂正するため、訂正したことが分かる。
- 勤怠管理アプリ・システムの場合、打刻の記録と訂正した記録を区別して表示するものを使用する。いつ誰が訂正したかの履歴を確認できたり、訂正回数が多い場合に警告を出したりするシステムもある。
●人的対策
人的な対策としてはaと同様に、訂正された箇所について、適切であるかを1つ1つ確認する方法があります。
不正打刻・改ざんの対策を導入する上でのポイント
以上のように、不正打刻・改ざんを防ぐ方法を紹介してきました。実際にこれらの対策を実施しようとすると、技術的な対策の場合、生態認証の装置やICカード等、専用の機器の導入などでコストが掛かってしまうことが多いです。一方で人的な対策の場合、運用面で手間が増えてしまいがちです。例えば、打刻カードを個人が持ち運ぶ運用にすると、従業員に負担がかかり、またカードを紛失するというリスクも生じます。
実際に対策を導入する際には、不正が実際に発生する可能性やその影響の大きさから、どの程度の手間やコストをかけるのか、どの程度のリスクは許容するのかを検討し、判断することが必要となります。
不正打刻・改ざん防止の具体例 ~タブレット タイムレコーダーの場合~
当社のiPad向け勤怠管理アプリ「タブレット タイムレコーダー」でも不正打刻・改ざんの対策が可能です。
a 打刻漏れ偽装、d 改ざんへの対策
タブレット タイムレコーダーでは、管理パスワードを設定し、管理者以外は打刻の編集が出来ないようにできます。そのため、一般の勤務者が打刻を編集できないようにすることができます。
もし、打刻忘れをしてしまった場合は、管理者に報告して修正する運用にすれば、その際に実態を確認することもできます。
また、タブレット タイムレコーダーでは、打刻を後から訂正した場合、打刻のデータと訂正のデータを区別して表示する仕組みになっています。管理者がデータを操作した場合も、勤務者がデータを確認できるので、打刻後の改ざんの抑止に繋がります。
b 打刻機の時刻操作への対策
タブレット タイムレコーダーはiPad用のアプリです。iPadにはアクセスガイドという一つのアプリしか使用できないようにする機能があります。アクセスガイドを使用することで、iPadの設定画面を開くことが出来なくなるため、iPad本体の時刻の変更を制限できます。
c なりすまし、代理打刻への対策
タブレット タイムレコーダーでは、打刻時に顔写真が撮影されます。撮影した写真は後から確認することができるため、なりすましの有無を確認することができます。従業員ごとの絞り込み表示が可能なので、他の従業員がその人を装って打刻していないかを一目で確認できます。
さらに、打刻写真をメール送信する機能を使えば、管理者がリアルタイムで打刻写真を確認できます。指紋認証リーダー、顔認証デバイスなどの特別な機器がなくても、なりすまし打刻の抑止が可能です。
その他のメリット
タブレット タイムレコーダーは買い切りのアプリであるため、使い続けても追加の費用が掛かりません。操作も簡単で、打刻カードや特殊な機器を準備する必要もありません。また、複数人で同時に打刻できる「みんなで打刻」や、打刻した写真にエフェクトをかけられる「打刻写真エフェクト」など日々の打刻を楽しくする機能も搭載されています。
3人までは全機能が無料で使用できるため、気軽に試してみることもできます。
iPadをお持ちの方は、まずはこちらからダウンロードしてください。
(または、App Storeで「タブレット タイムレコーダー」を検索ください)
ダウンロード後、最初にアプリを立ち上げると、機能の紹介があります。
サンプルデータも用意されるため、いきなり試してみることができます。
加えて、「とりあえずやってみよう」ページにも一連の流れが紹介されています。これに沿って進めてもらうことで、一通りの使い方がわかるようになっています。
(最終更新:2023/12/06)