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2020/07/17/

いまさら聞けない!?働き方改革に伴う労働法改正内容の詳細解説

働き方改革に関連する法改正(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)が2019年4月に実施されました。

名前だけは知っているけれども、実はまだ内容を詳しくは知らないという方もいらっしゃるかもしれません。そんな方のために、今回は働き方改革の全容について、以下の9項目に渡り、条文の該当箇所を引用しながら解説していきます。

  1. 残業時間の上限規制
  2. 年次有給休暇の取得義務化
  3. 高度プロフェッショナル制度の新設
  4. 3カ月のフレックスタイム制への対応
  5. 同一労働同一賃金導入
  6. 勤務間インターバルの努力義務化
  7. 中小企業への割増賃金率の猶予措置廃止
  8. 産業医・産業保健機能の強化
  9. 面接指導強化

この記事が皆さんにとって、働き方改革の理解の一助となれば幸いです。

1 残業時間の上限規制

時間外労働時間、休日出勤時間とは

労働基準法により、労働時間は原則、1日8時間・1週40時間以内とされており、これを法定労働時間と呼びます。また、休日は原則として、毎週少なくとも1回与えることとされており、これを法定休日と呼びます。時間外労働時間は、法定労働時間を超えた部分の時間を指し、休日出勤時間は法定休日に勤務した時間を指します。

36(サブロク)協定とは

労働基準法第36条に基づく労使協定のことを俗に36(サブロク)協定と呼びます。36協定を締結することで初めて時間外労働が可能になります。36協定を締結した場合でも、時間外労働時間については原則、年間360時間、単月45時間、までという上限があります。この上限を超えた労働をする場合は労使の協議を経て特別条項を定める必要があり、年間12か月のうち6回まで特別条項を発動することができます。特別条項では年間、単月の上限を新たに設定することができますが、これまでその上限について法的に定められていませんでした。つまり、極端な例として、単月120時間、年間1200時間のような特別条項を定めることも可能でした。

改正内容

今回の法改正で労働基準法第36条第6項の規定により、特別条項を発動した場合であっても、時間外労働時間に対して年間720時間、時間外労働時間と休日出勤時間の合計時間に対して月100時間、複数月平均80時間の上限が定められました。この複数月平均80時間とは、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」のいずれを取っても、全て1か月当たり80時間以内にしなければならないということです。

労働基準法

第三十六条 
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、(中略)その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
(略)
(略)
前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合に、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。
第一項の協定においては、第二項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要が場合において、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め七百二十時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる。この場合において、第一項の協定に、併せて第二項第二号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が一箇月について四十五時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間)を超えることができる月数(一年について六箇月以内に限る。)を定めなければならない。
使用者は、第一項の協定で定めるところによつて労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であつても、次の各号に掲げる時間について、当該各号に定める要件を満たすものとしなければならない。

  1. (略)
  2. 一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間 百時間未満であること。
  3. 対象期間の初日から一箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の一箇月、二箇月、三箇月、四箇月及び五箇月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の一箇月当たりの平均時間が八十時間を超えないこと。
(後略)

施行時期

新労働基準法の施行期日は2019/4/1ですが、中小企業(条文内参照)に対しては労働基準法附則第2条の通り、2021年4月までの猶予期間が設けられています。

労働基準法

附則『(平成三〇年七月六日法律第七一号)』

第一条 
この法律は、平成三十一年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
(後略)
第二条 
第一条の規定による改正後の労働基準法(以下「新労基法」という。)第三十六条の規定(新労基法第百三十九条第二項、第百四十条第二項、第百四十一条第四項及び第百四十二条の規定により読み替えて適用する場合を含む。)は、平成三十一年四月一日以後の期間のみを定めている協定について適用し、同年三月三十一日を含む期間を定めている協定については、当該協定に定める期間の初日から起算して一年を経過する日までの間については、なお従前の例による。
第三条 
中小事業主(その資本金の額又は出資の総額が三億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については五千万円、卸売業を主たる事業とする事業主については一億円)以下である事業主及びその常時使用する労働者の数が三百人(小売業を主たる事業とする事業主については五十人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については百人)以下である事業主をいう。第四項及び附則第十一条において同じ。)の事業に係る協定(新労基法第百三十九条第二項に規定する事業、第百四十条第二項に規定する業務、第百四十一条第四項に規定する者及び第百四十二条に規定する事業に係るものを除く。)についての前条の規定の適用については、「平成三十一年四月一日」とあるのは、「平成三十二年四月一日」とする。

罰則規定

労働基準法第119条の通り、この上限規定に違反した場合、使用者に対して、6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

労働基準法

第百十九条 
次の各号のいずれかに該当する者は、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

  1. 第三条、第四条、第七条、第十六条、第十七条、第十八条第一項、第十九条、第二十条、第二十二条第四項、第三十二条、第三十四条、第三十五条、第三十六条第六項、第三十七条、第三十九条(第七項を除く。)、第六十一条、第六十二条、第六十四条の三から第六十七条まで、第七十二条、第七十五条から第七十七条まで、第七十九条、第八十条、第九十四条第二項、第九十六条又は第百四条第二項の規定に違反した者
(後略)

2 年次有給休暇の取得義務化

年次有給休暇とは

年次有給休暇は労働基準法39条に規定される、6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、10日間付与することが使用者に義務付けられた法定の休暇です。

労働基準法

第三十九条 
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

年次有給休暇は、労働者が休んだとしても給与の支払われる休暇日であり、その取得は労働者の権利です。しかしながら、厚生労働省の調査によると平成29年度の年次有給休暇の取得率は51.1%(出典:平成30年就労条件総合調査の概況)と、依然として低い水準にあります。このような背景から、年次有給休暇の取得率向上を目指して法改正が行われました。

改正内容

労働基準法第39条第7,8項が新設されました。年次有給休暇を年10日以上付与された労働者に対し、付与から1年以内に5日以上、時季指定して取得させることが義務付けられました。ただし、労働者からの請求によって、既に5日以上の取得がある場合は、改めて時季指定する必要はありません。5日に満たない分について、時季指定する必要があります。ここでいう「時季指定」とは、取得日を日付まで具体的に指定することであり、一定の期間や月を指定するだけでは不十分です。また、時季指定にあたっては労働者の意見を聴取しなければならず、できる限り労働者の意見を尊重して希望に沿った取得時期になるよう努めなければなりません。

労働基準法

第三十九条 
使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。ただし、第一項から第三項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。
前項の規定にかかわらず、第五項又は第六項の規定により第一項から第三項までの規定による有給休暇を与えた場合においては、当該与えた有給休暇の日数(当該日数が五日を超える場合には、五日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しない。

年次有給休暇を取得させる義務の発生する期間は労働基準法施行規則第24条の5に規定されています。年次有給休暇を分割付与する場合であっても、当年度の付与数が10日を超えた時点で5日分を取得させる義務が発生します。

労働基準法施行規則

第二十四条の五 
使用者は、法第三十九条第七項ただし書の規定により同条第一項から第三項までの規定による十労働日以上の有給休暇を与えることとしたときは、当該有給休暇の日数のうち五日については、基準日(同条第七項の基準日をいう。以下この条において同じ。)より前の日であつて、十労働日以上の有給休暇を与えることとした日(以下この条及び第二十四条の七において「第一基準日」という。)から一年以内の期間に、その時季を定めることにより与えなければならない。
前項の規定にかかわらず、使用者が法第三十九条第一項から第三項までの規定による十労働日以上の有給休暇を基準日又は第一基準日に与えることとし、かつ、当該基準日又は第一基準日から一年以内の特定の日(以下この条及び第二十四条の七において「第二基準日」という。)に新たに十労働日以上の有給休暇を与えることとしたときは、履行期間(基準日又は第一基準日を始期として、第二基準日から一年を経過する日を終期とする期間をいう。以下この条において同じ。)の月数を十二で除した数に五を乗じた日数について、当該履行期間中に、その時季を定めることにより与えることができる。
第一項の期間又は前項の履行期間が経過した場合においては、その経過した日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日を基準日とみなして法第三十九条第七項本文の規定を適用する。
使用者が法第三十九条第一項から第三項までの規定による有給休暇のうち十労働日未満の日数について基準日以前の日(以下この項において「特定日」という。)に与えることとした場合において、特定日が複数あるときは、当該十労働日未満の日数が合わせて十労働日以上になる日までの間の特定日のうち最も遅い日を第一基準日とみなして前三項の規定を適用する。この場合において、第一基準日とみなされた日より前に、同条第五項又は第六項の規定により与えた有給休暇の日数分については、時季を定めることにより与えることを要しない。

使用者は年次有給休暇の計画付与をするにあたり、就業規則に以下を記載しなければなりません。

  • 時季指定の対象となる労働者の範囲
  • 時季指定の方法等

労働基準法

第八十九条 
常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

  1. 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
  2. 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  3. 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
(後略)

加えて、就業規則の定めるところにより、以下の項目について定めた労使協定(労働者の過半数で組織される労働組合または、労働者の過半数を代表する者との間で書面による協定)を締結する必要があります。なお、この労使協定は労働基準監督署に届け出る必要はありません。

  • 計画的付与の対象者
  • 計画付与する日数
  • 具体的な付与方法
  • 年次有給休暇の付与数が少ない労働者の取り扱い
  • 計画的付与日の変更方法

(出典:厚生労働省、有給休暇ハンドブック「年次有給休暇の計画的付与制度とは」)

労働基準法

第三十九条 
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との 書面による協定により、第一項から第三項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。

罰則規定

労働基準法第120条の通り、年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合(第39条第7項違反)や、就業規則に記載していない場合(第89条違反)は、使用者に対して、30万円以下の罰金が科される可能性があります。

労働基準法

第百二十条 
次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

  1. 第十四条、第十五条第一項若しくは第三項、第十八条第七項、第二十二条第一項から第三項まで、第二十三条から第二十七条まで、第三十二条の二第二項(第三十二条の三第四項、第三十二条の四第四項及び第三十二条の五第三項において準用する場合を含む。)、第三十二条の五第二項、第三十三条第一項ただし書、第三十八条の二第三項(第三十八条の三第二項において準用する場合を含む。)、第三十九条第七項、第五十七条から第五十九条まで、第六十四条、第六十八条、第八十九条、第九十条第一項、第九十一条、第九十五条第一項若しくは第二項、第九十六条の二第一項、第百五条(第百条第三項において準用する場合を含む。)又は第百六条から第百九条までの規定に違反した者
(後略)

3 高度プロフェッショナル制度の新設

高度プロフェッショナル制度とは

今回の法改正により高度プロフェッショナル制度が新設されました。高度プロフェッショナル制度は、高度の専門知識を有し、一定の年収要件を満たす労働者に対して、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度です。

労働基準法

第四十一条の二 
賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、当該委員会がその委員の五分の四以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において、第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者(以下この項において「対象労働者」という。)であつて書面その他の厚生労働省令で定める方法によりその同意を得たものを当該事業場における第一号に掲げる業務に就かせたときは、この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない。ただし、第三号から第五号までに規定する措置のいずれかを使用者が講じていない場合は、この限りでない。

導入する際の注意点

高度プロフェッショナル制度の対象になると、労働時間や割増賃金に関する労働基準法の適用こそ免れますが、労働基準法第41条の2で、対象となる労働者の範囲や、制度を導入した際に使用者が行わなければならない措置が規定されています。以下、少し長くなりますが順に解説していきます。

対象業務

金融、ディーリング、アナリスト、コンサルタント、研究開発といった、高度の専門技術を要し、労働時間と成果との関連性が高くないと厚生労働省令で定められた業務に従事する人のみが対象となります。

労働基準法

第四十一条の二 
(前略)

  1. 高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この項において「対象業務」という。)

労働基準法施行規則

第三十四条の二 
法第四十一条の二第一項第一号の厚生労働省令で定める業務は、次に掲げる業務(当該業務に従事する時間に関し使用者から具体的な指示(業務量に比して著しく短い期限の設定その他の実質的に当該業務に従事する時間に関する指示と認められるものを含む。)を受けて行うものを除く。)とする。

  1. 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  2. 資産運用(指図を含む。以下この号において同じ。)の業務又は有価証券の売買その他の取引の業務のうち、投資判断に基づく資産運用の業務、投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務又は投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引の業務
  3. 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務
  4. 顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務
  5. 新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務

対象労働者の範囲

適用対象となるのは、使用者との間の合意に基づき職務が明確に定められている、年収1075万円以上の労働者に限られます。

労働基準法

第四十一条の二 

  1. この項の規定により労働する期間において次のいずれにも該当する労働者であつて、対象業務に就かせようとするものの範囲
    1. 使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意に基づき職務が明確に定められていること。
    2. 労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額(厚生労働省において作成する毎月勤労統計における毎月きまつて支給する給与の額を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した労働者一人当たりの給与の平均額をいう。)の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること。

労働基準法施行規則

第三十四条の二 
法第四十一条の二第一項第二号ロの厚生労働省令で定める額は、千七十五万円とする。

健康管理時間の把握

労働時間の代わりに、健康管理時間を管理することが使用者に義務付けられています。健康管理時間とは、労働者が事業場内にいた時間と、事業場外で労働した時間の合計を指します。

労働基準法

第四十一条の二 

  1. 対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該対象労働者が事業場内にいた時間(この項の委員会が厚生労働省令で定める労働時間以外の時間を除くことを決議したときは、当該決議に係る時間を除いた時間)と事業場外において労働した時間との合計の時間(第五号ロ及びニ並びに第六号において「健康管理時間」という。)を把握する措置(厚生労働省令で定める方法に限る。)を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。

条文中の「厚生労働省令で定める方法」は、労働基準法施行規則第34条の2に記されており、以下の客観的な方法とされています。

  • タイムカードによる記録
  • パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録

労働基準法施行規則

第三十四条の二 
法第四十一条の二第一項第三号の厚生労働省令で定める労働時間以外の時間は、休憩時間その他対象労働者が労働していない時間とする。
法第四十一条の二第一項第三号の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法とする。ただし、事業場外において労働した場合であつて、やむを得ない理由があるときは、自己申告によることができる。

年間休日104日以上、4週4休の確保

対象労働者に対して、年間104日以上、かつ4週間に4日以上の休日を確保する必要があります。

労働基準法

第四十一条の二 

  1. 対象業務に従事する対象労働者に対し、一年間を通じ百四日以上、かつ、四週間を通じ四日以上の休日を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が与えること。

選択的措置

労働者の健康管理を目的として、以下の中からいずれか1つの措置を選択して取らねばなりません。

  • 始業から24時間以内に11時間以上の休息時間を確保し、深夜労働を月4回に留めること
  • 週40時間を超える健康管理時間を1カ月100時間、3カ月240時間以内とすること
  • 年次有給休暇と別に、年に1回継続した2週間以上の休暇を取得させること
  • 健康管理時間の状況、労働者の希望により健康診断を実施すること

労働基準法

第四十一条の二 

  1. 対象業務に従事する対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が講ずること。
    1. 労働者ごとに始業から二十四時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、第三十七条第四項に規定する時刻の間において労働させる回数を一箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。
    2. 健康管理時間を一箇月又は三箇月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内とすること。
    3. 一年に一回以上の継続した二週間(労働者が請求した場合においては、一年に二回以上の継続した一週間)(使用者が当該期間において、第三十九条の規定による有給休暇を与えたときは、当該有給休暇を与えた日を除く。)について、休日を与えること。
    4. 健康管理時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に健康診断(厚生労働省令で定める項目を含むものに限る。)を実施すること。

第37条第4項に規定する時刻とは深夜時間帯の事を指します。

労働基準法

第三十七条 
使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

労働基準法施行規則

第三十四条の二 
法第四十一条の二第一項第五号イの厚生労働省令で定める時間は、十一時間とする。
10法第四十一条の二第一項第五号イの厚生労働省令で定める回数は、四回とする。
11法第四十一条の二第一項第五号ロの厚生労働省令で定める時間は、一週間当たりの健康管理時間(同項第三号に規定する健康管理時間をいう。以下この条及び次条において同じ。)が四十時間を超えた場合におけるその超えた時間について、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める時間とする。

  1. 一箇月 百時間
  2. 三箇月 二百四十時間
12法第四十一条の二第一項第五号ニの厚生労働省令で定める要件は、一週間当たりの健康管理時間が四十時間を超えた場合におけるその超えた時間が一箇月当たり八十時間を超えたこと又は対象労働者からの申出があつたこととする。
13法第四十一条の二第一項第五号ニの厚生労働省令で定める項目は、次に掲げるものとする。

  1. 労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)第四十四条第一項第号から第三号まで、第五号及び第八号から第十一号までに掲げる項目(同項第三号に掲げる項目にあつては、視力及び聴力の検査を除く。)
  2. 労働安全衛生規則第五十二条の四各号に掲げる事項の確認

健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置

労働者の健康管理時間の状況に応じて、以下の中からいずれか1つの措置を選択して取らねばなりません。

  • 前項「選択的措置」のいずれかの措置(ただし、選択的措置で選択したもの以外)
  • 医師による面接指導
  • 代償休日又は特別な休暇の付与
  • 心とからだの健康問題についての相談窓口の設置
  • 適切な部署への配置転換
  • 産業医等による助言、指導又は保健指導

労働基準法

第四十一条の二 

  1. 対象業務に従事する対象労働者の健康管理時間の状況に応じた当該対象労働者の健康及び福祉を確保するための措置であつて、当該対象労働者に対する有給休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)の付与、健康診断の実施その他の厚生労働省令で定める措置のうち当該決議で定めるものを使用者が講ずること。

厚生労働省令で定める措置は労働基準法施行規則第34条の2に規定されています。

労働基準法施行規則

第三十四条の二 
14法第四十一条の二第一項第六号の厚生労働省令で定める措置は、次に掲げる措置とする。

  1. 法第四十一条の二第一項第五号イからニまでに掲げるいずれかの措置であつて、同項の決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が講ずることとした措置以外のもの
  2. 健康管理時間が一定時間を超える対象労働者に対し、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいい、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第六十六条の八の四第一項の規定による面接指導を除く。)を行うこと。
  3. 対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること。
  4. 対象労働者の心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること。
  5. 対象労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること。
  6. 産業医等による助言若しくは指導を受け、又は対象労働者に産業医等による保健指導を受けさせること。

同意の撤回に関する手続

高度プロフェッショナル制度の適用を同意した対象労働者が同意を撤回できるよう、手続を定めておかねばなりません。

労働基準法

第四十一条の二 

  1. 対象労働者のこの項の規定による同意の撤回に関する手続

苦情処理措置

労働者からの苦情の処理に関する措置について、苦情の申出先となる部署及び担当者、取り扱う苦情の範囲、処理の手順、方法等その具体的内容を明らかにすることが必要です。

労働基準法

第四十一条の二 

  1. 対象業務に従事する対象労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。

不利益取扱いの禁止

高度プロフェッショナル制度の適用に際し、同意が取れなかったことを理由に、配置及び処遇について不利益な取り扱いをしてはいけません。

労働基準法

第四十一条の二 

  1. 使用者は、この項の規定による同意をしなかつた対象労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。

4 3カ月のフレックスタイム制への対応

フレックスタイム制とは

フレックスタイム制とは、労働者があらかじめ定められた総労働時間の範囲内で日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。労働時間の調整を行うことのできる期間を清算期間と呼びます。フレックスタイム制において時間外時間は、清算期間内の実労働時間が予め定められた総労働時間を超えた時に発生します。

フレックスタイム制の基本的なルール

フレックスタイム制を導入するためには、労使協定で以下の点を定める必要があります。

  • 就業規則への記載
  • 所定の事項
    • 清算期間の長さと起算日の設定
    • 清算期間における総労働時間
      ※40×清算期間の暦日数/7(法定労働時間)以下にしなければならない
    • 標準となる1日の労働時間
      ※年次有給休暇取得時に支払われる賃金の算定基礎となる時間

改正内容

今回の法改正で、清算期間の上限が1カ月から3カ月に延長されました。

労働基準法

第三十二条の三 
使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

  1. この項の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲こととされる労働者の範囲
  2. 清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、三箇月以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)
  3. 清算期間における総労働時間
  4. その他厚生労働省令で定める事項

1カ月を超える清算期間を導入する場合の注意点

フレックスタイム制導入に関する労使協定を所轄労働基準監督署長に届出する必要があります。なお、清算期間が1カ月以内の場合、届け出は不要です。

労働基準法

第三十二条の二 
使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。
第三十二条の三 
前条第二項の規定は、第一項各号に掲げる事項を定めた協定について準用する。ただし、清算期間が一箇月以内のものであるときは、この限りでない。

精算期間が1カ月を超える場合、時間外労働の計算は以下のように行います。

  1. ①1か月ごとに、週平均50時間を超えた労働時間
    50×暦日数/7を超えた部分は割増した上で当月に支払わなければならない
  2. ②清算期間を通じて、法定労働時間の総枠を超えて労働した時間
    清算期間の総労働時間から①の時間を除き、法定労働時間を超えた部分を清算期間終了後に最終月の時間外労働としてカウントする。

労働基準法

第三十二条の三 
清算期間が一箇月を超えるものである場合における前項の規定の適用については、同項各号列記以外の部分中「労働時間を超えない」とあるのは「労働時間を超えず、かつ、当該清算期間をその開始の日以後一箇月ごとに区分した各期間(最後に一箇月未満の期間を生じたときは、当該期間。以下この項において同じ。)ごとに当該各期間を平均し一週間当たりの労働時間が五十時間を超えない」と、「同項」とあるのは「同条第一項」とする。
一週間の所定労働日数が五日の労働者について第一項の規定により労働させる場合における同項の規定の適用については、同項各号列記以外の部分(前項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)中「第三十二条第一項の労働時間」とあるのは「第三十二条第一項の労働時間(当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、労働時間の限度について、当該清算期間における所定労働日数を同条第二項の労働時間に乗じて得た時間とする旨を定めたときは、当該清算期間における日数を七で除して得た数をもつてその時間を除して得た時間)」と、「同項」とあるのは「同条第一項」とする。

5 同一労働同一賃金の導入

同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金とは、雇用形態によらず、同一の仕事に従事する労働者は皆、同一水準の賃金が支払われるべきだという概念です。同一企業・団体における、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

改正内容

同等の職務に就く限り、正規労働者と非正規雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的な取り扱いをすることが禁じられました。

基本となる不合理な待遇差の解消の考え方

不合理な待遇差を解消するための考え方として、「均衡待遇」と「均等待遇」があります。

均衡待遇

短時間・有期雇用労働者の待遇について、通常の労働者の待遇との間に不合理な待遇差がないこと、つまり、以下の違いに応じた範囲内で待遇が決定されることを指します。

  • 職務の内容
  • 職務の内容・配置の変更の範囲
  • その他の事情

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第八条 
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

第三十条の三 
派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する派遣先に雇用される通常の労働者の待遇との間において、当該派遣労働者及び通常の労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

均等待遇

待遇決定に当たって、職務内容・配置の変更の範囲が通常の労働者と同じ場合に、短時間・有期雇用労働者が通常の労働者と同じに取り扱われること、 つまり、短時間・有期雇用労働者の待遇が通常の労働者と同じ方法で決定されることを指します。ただし、同じ取扱いのもとで、能力、経験等の違いにより差がつくのは構いません。

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第九条 
事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

第三十条の三 
派遣元事業主は、職務の内容が派遣先に雇用される通常の労働者と同一の派遣労働者であつて、当該労働者派遣契約及び当該派遣先における慣行その他の事情からみて、当該派遣先における派遣就業が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該派遣先との雇用関係が終了するまでの全期間における当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるものについては、正当な理由がなく、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する当該通常の労働者の待遇に比して不利なものとしてはならない。

したがって職務内容、配置の変更の範囲が同じなら「均等待遇」、異なるならその他の事情を考慮した「均衡待遇」を行う必要があります。

どのような例が不合理な待遇差に当たるか、またどの程度の待遇差であれば認められるかについては同一労働同一賃金ガイドライン(厚生労働省告示第430号)をご参照ください。5頁以降に具体例が示されています。以下数例をピックアップします。

(問題とならない例)

  • 同様の定型的な業務に従事していても、職務の内容及び配置変更の有無により基本給に差をつけている。
  • 生産効率及び品質の目標値に対する責任の有無により、賞与を支給するかどうかを決めている。

(問題となる例)

  • 現在の業務に関連性のない経験を有することを理由に、基本給を高く設定している。
  • 通常の労働者には職務の内容や会社の業績等への貢献等にかかわらず、全員に何らかの賞与を支給しているが、短時間・有期雇用労働者には支給していない。

労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

非正規雇用労働者についても、雇入れ時に、労働者に適用される待遇の内容等の本人に対する説明義務が課されました。また、 雇入れ後も労働者の求めに応じ、比較対象となる労働者との待遇差の理由等についての説明義務が課されました。

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第十四条 
事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに、第八条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項(労働基準法第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項及び特定事項を除く。)に関し講ずることとしている措置の内容について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。
事業主は、短時間・有期雇用労働者が前項の求めをしたことを理由として、当該短時間・有期雇用労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

施行時期

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律、及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律は、2020/4/1に施行されました。

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

附 則 (平成三〇年七月六日法律第七一号) 抄

(施行期日) 
第一条 
この法律は、平成三十一年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
第五条の規定(労働者派遣法第四十四条から第四十六条までの改正規定を除く。)並びに第七条及び第八条の規定並びに附則第六条、第七条第一項、第八条第一項、第九条、第十一条、第十三条及び第十七条の規定、附則第十八条(前号に掲げる規定を除く。)の規定、附則第十九条(前号に掲げる規定を除く。)の規定、附則第二十条(前号に掲げる規定を除く。)の規定、附則第二十一条、第二十三条及び第二十六条の規定並びに附則第二十八条(前号に掲げる規定を除く。)の規定 平成三十二年四月一日

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

附 則 (平成三〇年七月六日法律第七一号) 抄

(施行期日) 
第一条 
この法律は、平成三十一年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
(後略)

6 勤務間インターバルの努力義務化

勤務間インターバルとは

労働者の生活時間や睡眠時間を確保し、健康保持や過重労働の防止を目的として、勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の休息時間を設ける制度のことです。

改正内容

今回の法改正で、勤務間インターバルを導入する努力義務が課されました。ただし、休息時間をどれだけ確保すれば良いかについての決まりはありません。また、あくまでも努力義務であるため、罰則規定はありません。

労働時間等の設定の改善に関する特別措置法

第二条 
事業主は、その雇用する労働者の労働時間等の設定の改善を図るため、業務の繁閑に応じた労働者の始業及び終業の時刻の設定、健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。

助成金制度

中小企業で9時間以上の勤務間インターバルを導入する場合、条件を満たすことで取組の実施に要した費用の一部が国から支給されます。
詳細は厚生労働省の働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)をご参照ください。

7 中小企業への割増賃金率の猶予措置廃止

時間外労働における割増率

労働基準法では時間外労働についての割増率を月60時間までは25%以上、月60時間超では50%以上とすることと定めています。しかし中小企業においては、時間外労働についての割増率を月60時間超であっても25%以上のままで良いという猶予措置が取られていました。

今回の法改正で2023年4月1日より、猶予措置を規定していた労働基準法138条が削除されることとなりました。

労働基準法

第百三十八条(旧) 
中小事業主(その資本金の額又は出資の総額が三億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については五千万円、卸売業を主たる事業とする事業主については一億円)以下である事業主及びその常時使用する労働者の数が三百人(小売業を主たる事業とする事業主については五十人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については百人)以下である事業主をいう。)の事業については、当分の間、第三十七条第一項ただし書の規定は、適用しない。
第三十七条 
使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

附則『(平成三〇年七月六日法律第七一号)』

第一条 
この法律は、平成三十一年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
(中略)
第一条中労働基準法第百三十八条の改正規定令和五年四月一日

8 産業医・産業保健機能の強化

産業医とは

産業医とは、事業場において労働者の健康管理等について、専門的な立場から指導・助言を行う医師のことです。労働者数50人以上の事業場においては、産業医の選任が事業者の義務となっています。また、小規模事業場(労働者数50人未満の事業場)においては、産業医の選任義務はありませんが、労働者の健康管理を医師等に行わせるように努めなければなりません。

衛生委員会とは

衛生委員会とは、労働者の健康管理等について、労使が協力して効果的な対策を進めるために、事業場に設置する協議の場です。衛生委員会のメンバーは、総括安全衛生委員会、産業医、衛生管理者、衛生に関する経験を有する労働者で構成されます。常時50人以上の労働者を使用する事業場では、「衛生委員会」の設置が事業者の義務となっています。

改正内容

長時間労働等により健康リスクが高い状況にある労働者を見逃さないために、産業医が活動を行いやすい環境の整備、及び労働者の健康情報の取り扱いルールの明確化・適正化を目的として、以下のような労働安全衛生法ならびに労働安全衛生規則の改正が行われました。

産業医の独立性・中立性の強化

産業医が、産業医学の専門的立場から、独立性・中立性をもってその職務を行うことができるよう、産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、誠実にその職務を行わなければなりません。

労働安全衛生法

第十三条 
産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、誠実にその職務を行わなければならない。

産業医の知識・能力の維持向上

産業医は、労働者の健康管理等を行うために必要な医学に関する知識・能力の維持向上に努めなければなりません。

労働安全衛生規則

第十四条 
法第十三条第二項の厚生労働省令で定める要件を備えた者は、次のとおりとする。
(中略)

  1. 産業医は、労働者の健康管理等を行うために必要な医学に関する知識及び能力の維持向上に努めなければならない。

産業医の辞任・解任時の衛生委員会等への報告

産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければなりません。

労働安全衛生規則

第十三条 
事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。

産業医への権限・情報提供の充実・強化

事業者は産業医に対して、健康管理及びその他の事項(面接指導、作業環境の維持、衛生教育、健康障害の原因調査・再発防止措置等)の職務をなし得る権限を付与しなければなりません。

労働安全衛生法

第十三条 
事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。

厚生労働省令で定める事項は、労働安全衛生規則第14条に規定されています。

労働安全衛生規則

第十四条 
法第十三条第一項の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げる事項で医学に関する専門的知識を必要とするものとする。

  1. 健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
  2. 法第六十六条の八第一項、第六十六条の八の二第一項及び第六十六条の八の四第一項に規定する面接指導並びに法第六十六条の九に規定する必要な措置の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
  3. 法第六十六条の十第一項に規定する心理的な負担の程度を把握するための検査の実施並びに同条第三項に規定する面接指導の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
  4. 作業環境の維持管理に関すること。
  5. 作業の管理に関すること。
  6. 前各号に掲げるもののほか、労働者の健康管理に関すること。
  7. 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。
  8. 衛生教育に関すること。
  9. 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。
(後略)
第十四条の四 
事業者は、産業医に対し、第十四条第一項各号に掲げる事項をなし得る権限を与えなければならない。
前項の権限には、第十四条第一項各号に掲げる事項に係る次に掲げる事項に関する権限が含まれるものとする。

  1. 事業者又は総括安全衛生管理者に対して意見を述べること。
  2. 第十四条第一項各号に掲げる事項を実施するために必要な情報を労働者から収集すること。
  3. 労働者の健康を確保するため緊急の必要がある場合において、労働者に対して必要な措置をとるべきことを指示すること。

事業者から産業医に対する情報提供

事業主は産業医に対して、以下の情報を提供しなければなりません。

  • 健康診断、面接指導実施後の措置に関する情報(これらの措置を講じない場合は、その旨及びその理由)
  • 時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超えた労働者の氏名・当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報(高度プロフェッショナル制度対象者については健康管理時間の超過時間)
  • 労働者の業務に関する情報であって産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるもの

労働安全衛生法

第十三条 
産業医を選任した事業者は、産業医に対し、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の労働時間に関する情報その他の産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報として厚生労働省令で定めるものを提供しなければならない。
第十三条の二 
前条第四項の規定は、前項に規定する者に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせる事業者について準用する。この場合において、同条第四項中「提供しなければ」とあるのは、「提供するように努めなければ」と読み替えるものとする。

厚生労働省令で定めるところは労働安全衛生規則第14条の2に規定されています。

労働安全衛生規則

第十四条の二 
法第十三条第四項の厚生労働省令で定める情報は、次に掲げる情報とする。

  1. 法第六十六条の五第一項、第六十六条の八第五項(法第六十六条の八の二第二項又は第六十六条の八の四第二項において読み替えて準用する場合を含む。)又は第六十六条の十第六項の規定により既に講じた措置又は講じようとする措置の内容に関する情報(これらの措置を講じない場合にあつては、その旨及びその理由)

労働安全衛生法

第六十六条の五 
事業者は、前条の規定による医師又は歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、当該医師又は歯科医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成四年法律第九十号)第七条に規定する労働時間等設定改善委員会をいう。以下同じ。)への報告その他の適切な措置を講じなければならない。
第六十六条の八 
事業者は、前項の規定による医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。
第六十六条の十 
事業者は、前項の規定による医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。

労働安全衛生規則

第十四条の二 
第五十二条の二第一項、第五十二条の七の二第一項又は第五十二条の七の四第一項の超えた時間が一月当たり八十時間を超えた労働者の氏名及び当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報
前二号に掲げるもののほか、労働者の業務に関する情報であつて産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるもの

  1. 法第十三条第四項の規定による情報の提供は、次の各号に掲げる情報の区分に応じ、当該各号に定めるところにより行うものとする。
    1. 前項第一号に掲げる情報 法第六十六条の四、第六十六条の八第四項(法第六十六条の八の二第二項又は第六十六条の八の四第二項において準用する場合を含む。)又は第六十六条の十第五項の規定による医師又は歯科医師からの意見聴取を行つた後、遅滞なく提供すること。
    2. 前項第二号に掲げる情報 第五十二条の二第二項(第五十二条の七の二第二項又は第五十二条の七の四第二項において準用する場合を含む。)の規定により同号の超えた時間の算定を行つた後、速やかに提供すること。
    3. 前項第三号に掲げる情報 産業医から当該情報の提供を求められた後、速やかに提供すること。
第十五条の二 
第十四条の二第一項の規定は法第十三条の二第二項において準用する法第十三条第四項の厚生労働省令で定める情報について、第十四条の二第二項の規定は法第十三条の二第二項において準用する法第十三条第四項の規定による情報の提供について、それぞれ準用する。

産業医の勧告を受けたときの衛生委員会等への報告

産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができます。事業者は、勧告を受けたときは、勧告の内容・勧告を踏まえて講じた措置の内容(措置を講じない場合は、その旨・その理由)を記録し、3年間保存しなければなりません。

労働安全衛生法

第十三条 
産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。この場合において、事業者は、当該勧告を尊重しなければならない。
事業者は、前項の勧告を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該勧告の内容その他の厚生労働省令で定める事項を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。

労働安全衛生規則

第十四条の三 
産業医は、法第十三条第五項の勧告をしようとするときは、あらかじめ、当該勧告の内容について、事業者の意見を求めるものとする。
事業者は、法第十三条第五項の勧告を受けたときは、次に掲げる事項を記録し、これを三年間保存しなければならない。

  1. 当該勧告の内容
  2. 当該勧告を踏まえて講じた措置の内容(措置を講じない場合にあつては、その旨及びその理由)
法第十三条第六項の規定による報告は、同条第五項の勧告を受けた後遅滞なく行うものとする。
法第十三条第六項の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。

  1. 当該勧告の内容
  2. 当該勧告を踏まえて講じた措置又は講じようとする措置の内容(措置を講じない場合にあつては、その旨及びその理由)

安全委員会、衛生委員会等の意見等の記録・保存

委員会における議事で重要なものに係る記録を作成し、3年間保存することが義務付けられています。

労働安全衛生規則

第二十三条 
事業者は、委員会の開催の都度、次に掲げる事項を記録し、これを三年間保存しなければならない。

  1. 委員会の意見及び当該意見を踏まえて講じた措置の内容
  2. 前号に掲げるもののほか、委員会における議事で重要なもの

産業医による衛生委員会等に対する調査審議の求め

産業医は、衛生委員会又は安全衛生委員会に対して、労働者の危険又は健康障害を防止するための基本となるべき対策の重要事項について、調査審議を求めることができます。

労働安全衛生規則

第二十三条 
産業医は、衛生委員会又は安全衛生委員会に対して労働者の健康を確保する観点から必要な調査審議を求めることができる。

労働者からの健康相談に適切に対応するために必要な体制の整備等

産業医が労働者からの健康相談に応じ、適切に対応するために、必要な体制の整備、措置を講ずるよう努めなければなりません。

労働安全衛生法

第十三条の三 
事業者は、産業医又は前条第一項に規定する者による労働者の健康管理等の適切な実施を図るため、産業医又は同項に規定する者が労働者からの健康相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。

労働者の心身の状態に関する情報の取り扱い

労働者が安心して医師等による健康診断等を受けられるようにするため、労働者の健康の確保に必要な範囲内で労働者の心身の状態に関する情報を収集し、保管及び使用しなければなりません。

労働安全衛生法

第百四条 
事業者は、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置の実施に関し、労働者の心身の状態に関する情報を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、労働者の健康の確保に必要な範囲内で労働者の心身の状態に関する情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。
事業者は、労働者の心身の状態に関する情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならない。
厚生労働大臣は、前二項の規定により事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。
厚生労働大臣は、前項の指針を公表した場合において必要があると認めるときは、事業者又はその団体に対し、当該指針に関し必要な指導等を行うことができる。

産業医等の業務の内容等の周知

産業医を選任した事業者は、産業医の業務内容、産業医による労働者の心身の状態に関する情報の取扱いの方法を、以下のいずれかの方法で労働者に周知させなければなりません。

  • 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、備え付けること。
  • 書面を労働者に交付すること。
  • 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

労働安全衛生法

第百一条 
事業者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨を常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けることその他の厚生労働省令で定める方法により、労働者に周知させなければならない。
産業医を選任した事業者は、その事業場における産業医の業務の内容その他の産業医の業務に関する事項で厚生労働省令で定めるものを、常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けることその他の厚生労働省令で定める方法により、労働者に周知させなければならない。
前項の規定は、第十三条の二第一項に規定する者に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせる事業者について準用する。この場合において、前項中「周知させなければ」とあるのは、「周知させるように努めなければ」と読み替えるものとする。

厚生労働省令で定める方法は労働安全衛生規則第98条の2に規定されています。

労働安全衛生規則

第九十八条の二 
法第百一条第一項及び第二項(同条第三項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の厚生労働省令で定める方法は、第二十三条第三項各号に掲げる方法とする。
法第百一条第二項の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。

  1. 事業場における産業医(法第百一条第三項において準用する場合にあつては、法第十三条の二第一項に規定する者。以下この項において同じ。)の業務の具体的な内容
  2. 産業医に対する健康相談の申出の方法
  3. 産業医による労働者の心身の状態に関する情報の取扱いの方法
第二十三条 
事業者は、委員会の開催の都度、遅滞なく、委員会における議事の概要を次に掲げるいずれかの方法によつて労働者に周知させなければならない。

  1. 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること。
  2. 書面を労働者に交付すること。
  3. 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

9 面接指導強化

面接指導制度

長時間労働によって健障害発症のリスクが高まった労働者を見逃さないために面接指導を実施することが、労働安全衛生法により義務付けられています。面接指導とは、問診その他の方法により、心身の状況に応じて必要な指導を行うことを指します。

改正内容

全ての労働者の労働時間の把握が義務化され、面接指導の条件が拡大されました。

労働時間の把握

使用者は正確な割増賃金の計算のために、労働時間の把握をすることが求められています。
ただし、みなし時間勤務者の労働時間は、給与計算に直結しないため、必ずしも管理する必要はありませんでした。今回の法改正により、健康管理を目的として、高度プロフェッショナル制度の対象者を除く全ての労働者について、タイムカードやパソコンのログインからログアウトまでの時間の記録等により労働時間を把握することと、労働時間の状況の記録を3年間保存することが義務付けられました。

労働安全衛生法

第六十六条の八の三 
事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。

労働安全衛生規則

第五十二条の七の三 
法第六十六条の八の三の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。
事業者は、前項に規定する方法により把握した労働時間の状況の記録を作成し、三年間保存するための必要な措置を講じなければならない。

面接指導の要件

長時間労働者に対する面接指導の要件が変更されました。今まで面接指導の条件は、「週の実労働時間が40時間を超えた時間」の1か月間の合計が100時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる者でした。法改正により条件が拡大され、「週の実労働時間が40時間を超えた時間」の1か月の合計が80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる者となりました。また、「週の実労働時間が40時間を超えた時間」の1か月間の合計が80時間を超えた場合は労働者に労働時間に関する情報を通知しなければなりません。

労働安全衛生法

第六十六条の八 
事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者(次条第一項に規定する者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。以下この条において同じ。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。

厚生労働省令で定める要件に該当する労働者の要件は労働安全衛生規則第52条の2に規定されています。

労働安全衛生規則

第五十二条の二 
法第六十六条の八第一項の厚生労働省令で定める要件は、休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が一月当たり八十時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者であることとする。ただし、次項の期日前一月以内に法第六十六条の八第一項又は第六十六条の八の二第一項に規定する面接指導を受けた労働者その他これに類する労働者であつて法第六十六条の八第一項に規定する面接指導(以下この節において「法第六十六条の八の面接指導」という。)を受ける必要がないと医師が認めたものを除く。
前項の超えた時間の算定は、毎月一回以上、一定の期日を定めて行わなければならない。
事業者は、第一項の超えた時間の算定を行つたときは、速やかに、同項の超えた時間が一月当たり八十時間を超えた労働者に対し、当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報を通知しなければならない。

面接指導は、この要件に該当する労働者の申出により行います。

労働安全衛生規則

第五十二条の三 
法第六十六条の八の面接指導は、前条第一項の要件に該当する労働者の申出により行うものとする。
前項の申出は、前条第二項の期日後、遅滞なく、行うものとする。
事業者は、労働者から第一項の申出があつたときは、遅滞なく、法第六十六条の八の面接指導を行わなければならない。
産業医は、前条第一項の要件に該当する労働者に対して、第一項の申出を行うよう勧奨することができる。
第五十二条の四 
医師は、法第六十六条の八の面接指導を行うに当たつては、前条第一項の申出を行つた労働者に対し、次に掲げる事項について確認を行うものとする。

  1. 当該労働者の勤務の状況
  2. 当該労働者の疲労の蓄積の状況
  3. 前号に掲げるもののほか、当該労働者の心身の状況

研究開発業務従事者に対する医師による面接指導

事業者は、時間外・休日労働時間が月当たり100時間を超える研究開発業務従事者に対して、申出なしに医師による面接指導を行わなければなりません。100時間に満たなくても、申出があれば、80時間を超え、疲労の蓄積が見られる場合はもちろん、第66条の8第1項に規定される面接指導の対象となるため、面接指導が必要となります。

労働安全衛生法

第六十六条の八の二 
事業者は、その労働時間が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める時間を超える労働者(労働基準法第三十六条第十一項に規定する業務に従事する者(同法第四十一条各号に掲げる者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。)に限る。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。
(後略)

労働基準法第36条第11項に規定する業務に従事する者とは研究開発業務従事者のことを指し、同法第41条各号に掲げる者及び第66条の8の4第1項に規定する者とは高度プロフェッショナル制度の対象者を指します。

労働基準法

第三十六条 
11第三項から第五項まで及び第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は、新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務については適用しない
第四十一条 
この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
(後略)

労働安全衛生法

第六十六条の八の四 
事業者は、労働基準法第四十一条の二第一項の規定により労働する労働者であつて、その健康管理時間(同項第三号に規定する健康管理時間をいう。)が当該労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める時間を超えるものに対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない

厚生労働省令で定める時間は労働安全衛生規則第52条の7の2に規定されています。

労働安全衛生規則

第五十二条の七の二 
法第六十六条の八の二第一項の厚生労働省令で定める時間は、休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間について、一月当たり百時間とする

高度プロフェッショナル制度対象労働者に対する医師による面接指導

高度プロフェッショナル制度対象労働者についても、健康管理時間のうち「1週間当たり40時間を超える時間」の1か月間の合計が100時間を超える場合は、申出なしに面接指導を行わなければなりません。

労働安全衛生法

第六十六条の八の四 
事業者は、労働基準法第四十一条の二第一項の規定により労働する労働者であつて、その健康管理時間(同項第三号に規定する健康管理時間をいう。)当該労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める時間を超えるものに対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。
(後略)

労働基準法第41条の2第1項の規定により労働する労働者とは高度プロフェッショナル制度対象労働者のことを指します。

労働基準法

第四十一条の二 
賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、当該委員会がその委員の五分の四以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において、第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者(以下この項において「対象労働者」という。)であつて書面その他の厚生労働省令で定める方法によりその同意を得たものを当該事業場における第一号に掲げる業務に就かせたときは、この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない。ただし、第三号から第五号までに規定する措置のいずれかを使用者が講じていない場合は、この限りでない。

  1. 高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この項において「対象業務」という。)

厚生労働省令で定める時間は労働安全衛生規則第52条の7の4に規定されています。

労働安全衛生規則

第五十二条の七の四 
法第六十六条の八の四第一項の厚生労働省令で定める時間は、一週間当たりの健康管理時間(労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第四十一条の二第一項第三号に規定する健康管理時間をいう。)が四十時間を超えた場合におけるその超えた時間について、一月当たり百時間とする。

おわりに

今回は働き方改革に関連する法改正内容の紹介をしていきました。労働基準法だけでなく様々な法律が改正されたことがお分かりいただけたかと思います。より詳しく知りたい方は、厚生労働省の「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」についてをご参照ください。

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