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2020/06/29/

労働時間の適正な把握方法とは?「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の解説

働き方改革の柱の一つに「長時間労働の是正」というものがあります。働き方改革が叫ばれて久しい世の中ですが、長時間労働やサービス残業は社会問題としてなおも残っています。そのような社会情勢の中で、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」)という通達が平成29年(2017年)に出されました。これは平成13年(2001年)に出された「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」=通称:「46通達(339号通達とも呼ばれる)」に、変更を加えたものになります。

「ガイドライン」には、労働時間の適正な把握方法が記載されています。こちらを解説したもの自体は厚生労働省からリーフレット「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」として出されていますが、内容も多くポイントが分かりにくいかもしれません。
そこで今回は、「ガイドライン」の内容紹介に加えて、具体的に勤怠管理を行う上で気をつけなくてはいけないポイントについて紹介していきたいと思います。

通達の解説

「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の解説に入る前に、そもそもこの「ガイドライン」のような通達とは、どのようなものなのか簡単に説明したいと思います。

通達とは

通達とは、上位機関から下位機関への公的な解釈を示したものになります。一般に、法律のように罰則規定を持っているわけではありません。あくまで行政機関の内部的な指針です。ただし、行政機関(今回の場合なら、厚生労働省)は通達に沿って行政指導を行いますので、通達は実質的に拘束力をもっており、企業にとって重要なものになっています。

通達の目的

通達の主な目的は、行政上の解釈や取り扱いの統一性を確保することです。例えば、同じ法令でも、各地の労働基準監督署によって解釈が運用が異なってしまうと、地域ごとに不合理な差異が発生してしまう可能性がありますが、通達によってこれを防ぐことができます。法律の条文は読み慣れない人にはとても読みにくいものですが、それを少し分かりやすくかみ砕いた通達は、法の解釈の手助けにもなっています。

今回紹介する「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は冒頭でも紹介しました「46通達」の内容を踏襲し、追加・変更を加えたものです。労務管理関係の通達の中でも、特に「労働時間の適正な把握方法」について詳細に説明したものになっています。

「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の解説

では、いよいよ「ガイドライン」について解説していきたいと思います。先ほどから何度か出ている「46通達」と「ガイドライン」はどちらも守る必要があるのではなく、新しい「ガイドライン」の方に従えば問題ありません。「46通達」と比べても、変更点はそれほど多くありませんが、より厳密になった箇所、追加内容等も、原文に沿って紹介していきたいと思います。

1 趣旨

「ガイドライン」が出された経緯について記載されています。
使用者には、労働時間を適切に管理する責務があります。しかし、現状、十分には管理されていない状況もあり、それを是正するため、この「ガイドライン」が作成されました。
「46通達」の冒頭をほぼ踏襲しています。

 労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有している。
 しかしながら、現状をみると、労働時間の把握に係る自己申告制(労働者が自己の労働時間を自主的に申告することにより労働時間を把握するもの。以下同じ。)の不適正な運用等に伴い、同法に違反する過重な長時間労働や割増賃金の未払いといった問題が生じているなど、使用者が労働時間を適切に管理していない状況もみられるところである。
 このため、本ガイドラインでは、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置を具体的に明らかにする。

2 適用の範囲

「ガイドライン」が適用される事業場や労働者を規定しています。
「46通達」に定義されている内容と同様のものになっています。

「ガイドライン」の対象外となる労働者は次の人たちです。

 本ガイドラインの対象事業場は、労働基準法のうち労働時間に係る規定が適用される全ての事業場であること。
 また、本ガイドラインに基づき使用者(使用者から労働時間を管理する権限の委譲を受けた者を含む。以下同じ。)が労働時間の適正な把握を行うべき対象労働者は、労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時間に限る。)を除く全ての者であること。
 なお、本ガイドラインが適用されない労働者についても、健康確保を図る必要があることから、使用者において適正な労働時間管理を行う責務があること。

3 労働時間の考え方

「ガイドライン」で新たに追加された内容になります。
適正に把握・管理する必要がある労働時間とは何かを示しています。
ただ、労働時間にあたるかどうかの判断を一律これといったもので決めるのは難しいため、使用者の指揮命令下に置かれているかどうかを状況に応じて判断していく必要があると述べています。

労働時間の定義に関するトラブルで裁判となるケースもあるため、判例を元に下記(ア)~(ウ)の具体例が挙げられています。

 労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。そのため、次のアからウのような時間は、労働時間として扱わなければならないこと。
 ただし、これら以外の時間についても、使用者の指揮命令下に置かれていると評価される時間については労働時間として取り扱うこと。
 なお、労働時間に該当するか否かは、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんによらず、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであること。また、客観的に見て使用者の指揮命令下に置かれていると評価されるかどうかは、労働者の行為が使用者から義務づけられ、又はこれを余儀なくされていた等の状況の有無等から、個別具体的に判断されるものであること。

  1. 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間
  2. 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)
  3. 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間

4 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置

労働時間の把握のために使用者が行うべき内容が具体的に記されています。
「46通達」の内容を踏襲しているものの、「ガイドライン」から新たに部分的に追加されたものがあります。

以下、一つ一つ説明していきます。

(1)始業・終業時刻の確認及び記録

使用者には労働時間を適正に把握する責務がありますが、単に1日何時間働いたかを把握するだけでなく、労働日ごとに実際の始業時刻・終業時刻を確認・記録する必要があることを示しています。
「46通達」と同様のものになっています。

 使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・ 終業時刻を確認し、これを記録すること。

(2)始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法

使用者が始業時刻・終業時刻を確認・記録する方法を記載しています。
記録には使用者の現認または客観的な記録方法が必要になっています。

使用者の現認とは、使用者自らがその場にいて出勤、退勤を見届けることです。
実際のところ、少人数の事業場以外では使用者の現認による運用は難しいため、タイムレコーダー等の打刻方法が必要になると言えるでしょう。
「46通達」と基本的に同様の内容ですが、記録方法に「パソコンの使用時間の記録等」という具体例が追加されています。

 使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。

  1. 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
  2. タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること

(3)自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置

やむを得ず自己申告で労働時間の管理が必要となる場合に、使用者が行うべき内容について記述されています。
労働者や現場の管理者に自己申告制を十分説明すること、自己申告制が適正に運用されているか実態調査すること、適正な自己申告制を行えるよう改善すること、などが記されています。

「46通達」でも一部記述されていましたが、「ガイドライン」ではより具体的かつ詳細に内容を記しています。

(ウ)により、実態調査や労働時間補正についての記述が追加されました。
(エ)により、事業場内にいる時間を労働時間として取り扱う必要があるか適切に都度判断するという内容が追加されました。

 上記(2)の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずること。

  1. 自己申告制の対象となる労働者に対して、本ガイドラインを踏まえ、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。
  2. 実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、本ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと。
  3. 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
    特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
  4. 自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。
    その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと。
  5. 自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。
    また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。
    さらに、労働基準法の定める法定労働時間や時間外労働に関する労使協定(いわゆる36協定)により延長することができる時間数を遵守することは当然であるが、実際には延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、実際に労働時間を管理する者や労働者等において、慣習的に行われていないかについても確認すること。

(4)賃金台帳の適正な調製

「ガイドライン」から新たに追加された内容です。(調製とは、注文や規格に応じて作ることを意味します。)
労働基準法の第108条によって賃金台帳の作成・保存が義務づけられています。
ここでは、賃金台帳に記載すべき具体的な内容(労働日数、労働時間数、等)、及び、虚偽の記載を行った場合の罰則が示されています。

 使用者は、労働基準法第108条及び同法施行規則第54条により、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければならないこと。
 また、賃金台帳にこれらの事項を記入していない場合や、故意に賃金台帳に虚偽の労働時間数を記入した場合は、同法第120条に基づき、30万円以下の罰金に処されること。

(5)労働時間の記録に関する書類の保存

労働時間を記録すべき書類(出勤簿、タイムカード、等)、及び、その書類の3年間の保存義務について示されています。
「46通達」では具体的な書類は明示されていませんでしたが、「ガイドライン」では明示されました。

 使用者は、労働者名簿、賃金台帳のみならず、出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第109条に基づき、3年間保存しなければならないこと。

(6)労働時間を管理する者の職務

「ガイドライン」から新たに追加された内容です。
現場の労働時間の管理者について、労働時間管理上の問題点の把握や改善を行うよう示しています。

 事業場において労務管理を行う部署の責任者は、当該事業場内における労働時間の適正な把握等労働時間管理の適正化に関する事項を管理し、労働時間管理上の問題点の把握及びその解消を図ること。

(7)労働時間等設定改善委員会等の活用

労働時間等設定改善委員会等の組織を活用し、事業場内の労働管理状況の把握や改善を行うよう示しています。

労働時間等設定改善委員会等の措置を講ずるケースとしては、自己申告制により労働時間の管理が行われている場合などがあります。
(参考:リーフレット「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)
「46通達」と同様の内容です。

 使用者は、事業場の労働時間管理の状況を踏まえ、必要に応じ労働時間等設定改善委員会等の労使協議組織を活用し、労働時間管理の現状を把握の上、労働時間管理上の問題点及びその解消策等の検討を行うこと。

「46通達(339号通達)」との変更点の紹介

ここまで、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」についての解説をしました。上の解説でも紹介していますが、「ガイドライン」と「46通達」との大きな変更点を以下にまとめました。

それぞれ該当箇所へのリンクになっていますので、気になる箇所をクリックしてください。

勤怠管理を行う上で、気を付けておくべきポイント

労働基準法において、労働時間、休日、深夜業等が規定がされていることから、使用者には、労働時間を適切に管理する責務があることを確認しました。

最後に、この責務を果たす上で、勤怠管理上特に注意が必要な点をまとめました。

労働時間の考え方

使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たります。  

始業・終業時刻の管理が必要

タイムカードによる記録、PC等の使用時間の記録などの客観的な方法や使用者による現認が原則となります。 

法定三帳簿の保存が必要

労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存する必要があります。

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参考