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2023/09/22/

年次有給休暇とは|入社から付与、退職まで法律を具体的に解説

1.はじめに

「年次有給休暇」という制度について、皆さんはどのくらいご存じでしょうか。
言葉だけは聞いたことがあるという方や、なんとなく「お休み」の一つだと思っている方もいるかもしれません。

年次有給休暇は、「年休」や「有休」と呼ばれることもあります。こちらの言葉は聞き馴染みのある方も多いのではないでしょうか。

年次有給休暇制度は労働基準法で規定されている制度であり、労務管理をしていくには、年次有給休暇制度についての知識が必要となります。
また労働者の方は、自身の権利を理解し適切に活用するためにも、年次有給休暇について理解をしておくことが大切です。

本記事では、「年次有給休暇について、とりあえずこれだけは知っておきたい」という基礎知識を、入社から退職までの流れに沿って、解説していきます。

この記事を読んで、年次有給休暇の基礎知識を身に着けましょう!

2.年次有給休暇とは?

そもそも年次有給休暇とは一体どんなものなのでしょうか。

<年次有給休暇とは?>

  • 読んで字のごとく休暇(=お休み)の一つです
  • 一定期間勤続した労働者に対して管理者が付与する義務があります
  • 休息やリフレッシュを目的として労働者に付与されます
    使い方は労働者が自由に決めることができます
  • 有給」で休むことができます
    給与が月給で決まる方は、休んでも給与の減額などはありません
    給与が時給で決まる方は、休んでも給与が支払われることになります

休暇とはそもそも何かということについては、以下の記事もおすすめです。
休暇と休日の違い、どれだけ知ってる?ポイントを絞ってわかりやすく解説!

年次有給休暇制度は労働基準法で定められている制度であり、多くのルールが設けられています。

ここからは架空の従業員である根尾さんの入社から退職までの流れに沿って、年次有給休暇についてどのようなルールがあるのかを見ていきましょう。

3.年次有給休暇の付与 -入社~1年目-


☆根尾さんは4月からとある会社で働くことになりました。
年次有給休暇は入社から半年後である10月に会社からもらえます。
年次有給休暇は出勤率によって付与されるかどうかが決まりますが、根尾さんは病欠など
もしなかったため、無事に10日分の年次有給休暇をもらうことができました。


年次有給休暇の付与については労働基準法第39条にルールが記載されています。
労働基準法第39条

第三十九条
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務全労働日
の八割以上出勤
した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

入社から半年以内に年次有給休暇の最初の付与が発生します。
入社から半年が経過した従業員全員が付与の対象となるのではなく、出勤率が8割以上の場合に年次有給休暇の付与対象となります。
詳しい出勤率の計算方法については本記事では割愛しますが、出勤しなければならない日(=全労働日数)に対する、実際に出勤した日(=出勤日数)の割合によって計算します。
そのため、病気などで欠勤した場合には出勤率が下がることになります。

今回のケースでは、根尾さんは欠勤・病欠などもしなかったため、出勤率が8割以上となり、年次有給休暇が付与されました。
続いては、こちらも架空の従業員である熱田さんの年次有給休暇について見ていきましょう。


☆熱田さんも4月から根尾さんと同じ会社で働くことになりました。
根尾さんと同様に年次有給休暇は、入社から半年後の10月に会社からもらえます。
熱田さんはパートタイム従業員なので、出勤日数に応じて付与される年次有給休暇の日数が決まります。
週4日働く決まりになっているBさんは、7日分の年次有給休暇をもらうことができました。


アルバイトやパートさんは年次有給休暇が利用できない、と思っている方もいるかもしれませんが、実際には通常の従業員と同じように年次有給休暇を利用することができます。

年次有給休暇は通常の従業員では10日間の付与がありますが、
週所定労働時間が30時間未満のパートタイム労働者はそれよりも少ない日数の付与となります。

所定労働時間とは、企業が労働契約や就業規則によって定める労働時間のことです。就業規則の中に1日に8時間働かなければならない旨のことが記載されている場合は、一日の所定時間は8時間であるといえます。
週所定労働時間は、各企業が定めている「1週間に働かなければならない」時間となります。

労働基準法第39条第3項

第三十九条 ③ 次に掲げる労働者(一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定め
る時間
以上の者を除く。)の有給休暇の日数については、前二項の規定にかかわらず、これらの規定による有給休暇の日数を基準とし、通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数(第一号において「通常の労働者の週所定労働日数」という。)と当該労働者の一週間の所定労働日数又は一週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数とする。
一 一週間の所定労働日数が通常の労働者の週所定労働日数に比し相当程度少ないものとして厚生労働省令で定める日数以下の労働者
二 週以外の期間によつて所定労働日数が定められている労働者については、一年間の所定労働日数が、前号の厚生労働省令で定める日数に一日を加えた日数を一週間の所定労働日数とする労働者の一年間の所定労働日数その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める日数以下の労働者

労働基準法施行規則第24条の3

第二十四条の三 法第三十九条第三項の厚生労働省令で定める時間は、三十時間とする。

週所定労働時間が30時間未満のパートタイム労働者は、週の所定労働日数が何日か(もしくは1年間でどれだけ働くか)によって、付与される日数が変化します。
付与される日数については、『5.年次有給休暇の繰越と2回目以降の付与 -2年目以降-』で解説します。

今回根尾さんと熱田さんは入社から半年後に年次有給休暇の最初の付与がありましたが、会社によっては入社と同時に最初の付与を行うこともあります。
最初の年次有給休暇の付与は、入社半年以内の範囲の中で会社が規定によって決めることができるため、会社ごとに最初の付与を行うタイミングが異なることがあります。
みなさんも一度自分の会社の就業規則などを確認してみてはいかがでしょうか。

4.年次有給休暇の利用・取得


☆年次有給休暇をもらった根尾さんは、早速年次有給休暇を利用するために上司に△月◯日 に取得したいという申請をし、その日は朝から晩まで海で釣りを楽しむことができました。
また会社から別の日に、年次有給休暇を取得したい日について意見を聞かれたので、特に 取得したい日がないことを伝えると、「この日に取得してね」という指定を5日分されました。


年次有給休暇を取得する日は、労働者が指定することによって決めることができます。
今回の場合では、労働者である根尾さんが年次有給休暇の取得日を上司に申請し、△月◯日に年次有給休暇を取得することを決めています。

労働基準法第39条第5項

第三十九条 ⑤ 使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

ただし事業の正常な運営が妨げられる場合は、使用者に休暇取得日を変更できる権利があります。この権利のことを時季変更権と呼びます。

時季変更権が認められるかどうかは状況によりますが、この「事業の正常な運営が妨げられる場合」というのは、単に業務が多忙だからというだけでは認められないものとなります。

また1年で10日以上の年次有給休暇が付与された場合、年5日取得義務が発生します。

労働基準法第39条第7項

第三十九条 ⑦ 使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。ただし、第一項から第三項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。

年次有給休暇の取得義務について更に詳しく知りたい方には、こちらの記事もおすすめです。
有給休暇の年5日取得義務とは?管理のポイントや対策を解説

労働者が年次有給休暇をいつ取得するか指定することや、使用者が取得義務のある年次有給休暇5日分の日付を指定することを、時季指定と呼びます。

5.年次有給休暇の繰越と2回目以降の付与
-2年目以降-


☆年次有給休暇を無事に利用できた根尾さんは、入社して2年目になりました。
根尾さんは昨年度付与された10日間の年次有給休暇のうち、8日分を取得しました。
昨年度に使い切れなかった2日分の年次有給休暇は2年目に繰り越され、引き続き取得  できます。また昨年度よりも付与される年次有給休暇の日数は増え、11日付与されました。


年次有給休暇は年度をまたいで繰り越すことができます。
付与された年度内に年次有給休暇を取得しなくても、翌年度にすぐ年次有給休暇を失ってしまうということはありません。

また継続勤務年数によって年次有給休暇の付与日数は増加していきます。
労働基準法第39条第2項

第三十九条 ② 使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない

上の条文では、1年6ヶ月以上勤務した場合に、年次有給休暇の付与日数が増えることを規定していますが、入社から6ヶ月以内に最初の付与が発生するため、1年6ヶ月というのは最初の付与から1年後になります。

以下がパートタイム労働者でない従業員における、勤続年数ごとの年次有給休暇の付与日数になります。

勤続年数 1年目
(初回付与)
2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目以降
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

週所定労働時間が30時間未満のパートタイム労働者では、以下のようになります。

週所定労働日数 1年間の所定労働日数  勤続年数
1年目(初回付与) 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目以降



4日 169~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

6.年次有給休暇の消滅 -失効・退職-


☆その後、根尾さんは昨年度は指定された日以外には年次有給休暇を利用せず2年目と3年目を過ごし、4年目を迎えました。
年次有給休暇の有効期限は2年になるので、2年目にもらった年次有給休暇は利用できなくなってしまいました。


年次有給休暇は付与された日から2年後に失効します。
例えば、2025/4/1に付与された年次有給休暇は、2027/3/31までは取得することができますが、2027/4/1に失効し、利用できなくなります。

労働基準法第115条

第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。

一度付与された年次有給休暇はいつまでも利用できるものではないので注意しましょう。


☆根尾さんは会社を勤め上げ、ついに退職する運びとなったため、退職までの期間で年次有 給休暇を使い切ることにしました。


4.年次有給休暇の利用・取得』で先述しましたが、年次有給休暇を取得する日は、労働者が指定することによって決めることができます。
退職時にもこの規則は適用され、年次有給休暇がある場合は、退職の効力が発生するまでの期間であれば取得が可能となります。

7.年次有給休暇管理簿の作成・保存について

ここまで根尾さんの入社から退職までの流れを見てきましたが、労働者に年次有給休暇を与えた場合には、使用者は年次有給休暇管理簿の作成・保管をする義務が発生します。

10日以上の年次有給休暇が付与された場合、年5日の取得義務が発生することは先述しましたが、この年次有給休暇の取得義務が守られているかを確認するために年次有給休暇管理簿の管理が必要となります。

労働基準法施行規則第24条の7

第二十四条の七 使用者は、法第三十九条第五項から第七項までの規定により有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日(第一基準日及び第二基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにした書類(第五十五条の二及び第五十六条第三項において「年次有給休暇管理簿」という。)を作成し、当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後五年間保存しなければならない。

年次有給休暇管理簿を作成する際は、いつ休暇を与えたか、何日休暇を与えたか、いつ休暇を取得したかを記載する必要があります。さらに、作成した年次有給休暇管理簿は5年間(当分の間は3年間)保存しなければなりません。

8.まとめ

ここまで年次有給休暇の基本となるルールを見てきました。

年次有給休暇制度にまつわるルールは多くありますが、当社のタブレット タイムレコーダーでは、年次有給休暇の登録ができるため、各勤務者の取得日数を月ごとに管理・出力できます。
タブレット タイムレコーダーについて更に詳しい情報をお求めの方は以下のサイトを御覧ください。
https://www.tablet-time-recorder.net/

また、より厳密に対応したい場合は、さらに複雑な管理ができるシステムが必要です。
当社では、「キンタイミライ」というクラウド勤怠管理システムを提供しております。
キンタイミライでは、

  • 年5日取得義務の対象者や取得義務期間を自動で判定
  • 期限が近づいている勤務者がいる場合、管理者にアラートを出して注意喚起
  • 計画年休制度の管理
  • システム内での年次有給休暇の申請・承認
  • 過去5年分の年次有給休暇管理簿をシステムから出力

といった、より詳細な年次有給休暇の取得管理が可能です。
キンタイミライについて更に詳しい情報をお求めの方は以下のサイトを御覧ください。
https://kintaimirai.jp/

今回は紹介できませんでしたが、年次有給休暇の制度にはより複雑な規則もあるので気になった方は是非調べてみてください。

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