2024/10/25/07. 勤怠管理の運用
Excelを利用したフレックスタイム制の残業時間と不足時間の集計方法
はじめに
近年、フレックスタイム制で働く人が増えています(関連リンク)。タブレット タイムレコーダーの集計ルール設定はフレックスタイム制に対応していませんが、タブレット タイムレコーダーで集計した1ヵ月の総労働時間があれば、Excelを利用して月単位の残業時間と不足時間は比較的簡単に計算できます。
本記事では、タブレット タイムレコーダーとExcelを使って、フレックスタイム制の残業時間と不足時間を計算するための方法を紹介します。
フレックスタイム制とは
フレックスタイム制は、労働者があらかじめ定められた総労働時間の範囲内で日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。
フレックスタイム制は変形労働時間制の一種ですが、通常の変形労働時間制は繁忙期や閑散期に合わせて使用者が勤務時間をあらかじめ決めておく点で異なります。また、働く時間帯に柔軟性がある点では裁量労働制に似ていますが、裁量労働制では実労働時間ではなく「みなし労働時間」で賃金計算を行うという違いがあります。
フレックスタイム制を導入するためには、下記の点を定める必要があります。
- 清算期間の長さと起算日
- 清算期間における総労働時間
- 標準となる1日の労働時間
参考リンク いまさら聞けない!?働き方改革に伴う労働法改正内容の詳細解説
賃金計算においては、日ごとの残業時間や不足時間ではなく、定められた総労働時間に対する過不足で割増賃金や控除の計算を行います。
フレックスタイム制では、会議や共同作業を効率よく行えるように、全社員が必ず勤務しなければならない時間帯(コアタイム)が定められていることがあります。そのため、賃金計算とは別に、コアタイムに勤務しているかどうかの管理が必要になる場合があります。
設定方法
清算期間の長さと起算日
この記事では清算期間を1ヵ月とする場合で説明します。
タブレット タイムレコーダーではファイルの出力単位は月度単位なので、期間の長さの設定は不要です。
起算日については、「締日」として設定することに注意しましょう(起算日が1日の場合、締日は末日とします)。
- 管理 > メニュー > メンバー種別・集計ルール > 共通 > 締日
清算期間における総労働時間
タブレット タイムレコーダーでは清算期間における総労働時間(1ヵ月の所定労働時間)を設定することはできません。
後述しますが、データ出力後にExcelに手入力することになります。
標準となる1日の労働時間
ここからは、集計ルール設定画面を開いた後の操作方法を説明します。
集計ルール設定画面へは以下の順にタッチして移動します。
- 管理 > メニュー > メンバー種別・集計ルール > (設定したいメンバー種別) > 集計ルール
年次有給休暇を取得した日に標準となる1日の労働時間を労働したものとして取り扱うために、「有休・特休(有給)取得時の時間換算」に固定時間を指定し、「総時間」に有給休の時間を含める設定をします。
有休・特休(有給)取得時の時間換算
固定時間に基づいて時間換算する設定をします。
- 休暇 > 詳細設定 > 有休・特休(有給)取得時の時間換算:「固定時間を指定する」にタッチする
1つ前のページへ戻り、「有休・特休(有給)の固定時間」を設定します。
固定時間として、標準となる1日の労働時間(ここでは「8:00」としています)を入力します。
総時間
以下の設定をします。
- 時間数 > 総時間 > 詳細設定:「有休・特休(有給)の時間を含む」をON
コアタイム
コアタイムに勤務しているかどうかを管理したい場合は、「所定」と「遅早退」の設定を利用できます。
所定
所定にコアタイムの時間帯を登録することで、コアタイムに対する遅刻早退の回数を集計できます。
※遅刻早退の管理が不要であれば、所定の設定を行う必要はありません。
例として、ここではコアタイムを10:00-16:00とします。
所定 > 所定勤務の指定方法:時間帯
所定 > コアタイム開始時刻:10:00(任意の時刻)
所定 > コアタイム終了時刻:16:00(任意の時刻)
- 打刻まるめ > 詳細設定 > 所定始業時刻まるめ:OFF
遅早退
コアタイムに対する遅刻・早退回数を集計する場合は、下記のように設定します。
- 遅早退 > 「遅早退を利用する」をON
- 時間数 > 遅早退時間:「利用する」をOFFにする
- 時間数 > 詳細設定 > 遅刻時間:「利用する」をOFFにする
- 時間数 > 詳細設定 > 早退時間:「利用する」をOFFにする
遅早退回数を表示するには、以下のように設定します。
- 日数・回数 > 遅早退回数:「利用する」をONにする
遅刻回数と早退回数を分けて集計する場合は、以下のように設定します。
- 日数・回数 > 詳細設定 > 遅刻回数:「利用する」をONにする
- 日数・回数 > 詳細設定 > 早退回数:「利用する」をONにする
その他の設定
残業
フレックスタイム制では残業時間を日ごとに管理することはないため、以下のように操作します。
- 残業 > 残業の定義 :なし
休出について
総時間には、休出を含めるかどうかを設定できます。
休日のうち、労働基準法で定められている分を、とくに「法定休日」と呼びます。
ちなみに、法定休日以外の休日は「法定外休日」や「所定休日」と呼ばれることがあります。
フレックスタイム制においての法定休日出勤の時間は、清算期間における総時間とは別で扱う必要があります。
休日が法定休日であれば、「休出の時間を含む」はOFFにします。
- 時間数 > 総時間 > 詳細設定:「休出の時間を含む」OFF
なお、勤務実態として、休出が法定休日に発生することがない場合は、「休出の時間を含む」はONにしても問題ありません。
※ここでは「休出の時間を含む」をOFFにした場合を表示しています。
Excelで1ヵ月の残業時間と不足時間を計算する
清算期間を1ヵ月とするフレックスタイム制において、残業時間は1ヵ月の「総労働」のうち、定められた総労働時間(いわゆる1ヵ月の所定労働時間)を超える分、不足時間(控除時間)はそれに満たない分となります。
タブレット タイムレコーダーで自動集計できるのは1ヵ月の「総労働」だけなので、出力後のデータにその月の所定労働時間を手入力し、Excelを使って残業時間と不足時間を計算します。
フレックスタイム制における所定労働時間と法定労働時間とは
所定労働時間とは、企業や団体によって定められた労働時間をいいます。労働契約で明示することが義務づけられており、就業規則や雇用契約書などの書類で確認できます。
なお、所定労働時間は法定労働時間以内とします。
また、法定労働時間の総枠は月の暦日数によって下記のように決まっています。
清算期間の暦日数 | 法定労働時間の総枠 |
---|---|
31日 | 177:08 |
30日 | 171:25 |
29日 | 165:42 |
28日 | 160:00 |
※清算期間における法定労働時間の総枠=1週間の法定労働時間(40時間)×清算期間の暦⽇数/7日
詳しくは「法定外労働」「所定外労働」は何が違う?「時間外労働」との関係は?ややこしい言葉の違いを解説をご覧ください
集計方法
メンバーの1ヶ月の合計の勤怠データが出力される給与ソフト向けデータ(CSV)を使用し、手作業で調整を行います。
データの出力方法については、「5-3.データを出力してみる」をご覧ください。
1. 列を追加する
タブレット タイムレコーダーで出力した給与ソフト向けデータをExcelで開き、下記3つの列を追加します。
- 所定労働時間
- 残業時間
- 不足時間
2. 所定労働時間を入力する
ここでは所定労働時間を「176:00」としています。
3. 残業時間の算出
残業時間は「総時間-所定労働時間」で算出できます。
その際、総時間が所定労働時間より少ない場合(=残業時間がマイナス値になる場合)を「0:00」として算出する必要があります。
そのためにMAX関数を使用し、「=MAX(総時間-所定労働時間,0)」とします。
ここでは、「=MAX(J2-M2,0)」という数式で算出しています。
4. 不足時間の算出
不足時間は「所定労働時間-総時間」で算出できます。
その際、総時間が所定労働時間より多い場合(=不足時間がマイナス値となる場合)を「0:00」として算出する必要があります。
そのためにMAX関数を使用し、「=MAX(所定労働時間-総時間,0)」とします。
ここでは、「=MAX(M2-J2,0)」という数式で算出しています。
おわりに
Excelを利用したフレックスタイム制の残業時間と不足時間の集計方法を紹介しました。
本記事が運用イメージの参考になれば幸いです。もしご不明点がありましたら、サポーターフォーラムまたはsupport@tablet-time-recorder.netより、お気軽にお問い合わせください。